面白いもので、Windowsはバージョンアップするほど、セットアップ時の手順がシンプルになってきている。だから、昔のWindowsサーバと比較すると、今のWindowsサーバの方がセットアップは楽だ。とはいえ、確実に押えておきたいポイントはいろいろあるので、今回はセットアップ関連の作業についてまとめてみよう。
セットアップの基本手順
従来と同様、Windows Server 2008 R2でもDVD-ROMを使ってセットアップする方法が基本になる。ただし、短時間の間に多数のサーバを立ち上げなければならない場合には、セットアップ済みイメージの展開、あるいは無人セットアップといった方法を用いなければならないかもしれない。
こういったところのノウハウについては、クライアントPC向けのコンテンツではあるが、TechNet Onlineの「展開センター」が参考になるかもしれない。サーバではあまり出番がなくても、クライアントPCの展開ではお世話になる可能性がある。
なお、セットアップ開始の前に、パーティションの構成を決めておく必要がある。一般的にはパーティションを細かく分けるとディスクの利用効率が悪くことと、C:ドライブの消費量が多くなりやすい傾向があることを考慮して、できるだけパーティションの数は少なくしたい。しかし、OSとデータを分離しておく方が好ましい理由も存在する。
まず、データを独立したパーティションに配置しておく方が、バックアップやアクセス権の管理を行いやすい。また、Active Directoryを使用する場合には、Active Directoryデータベースを配置するパーティションの書き込みキャッシュが無効になるため、そこに共有フォルダを初めとしてアクセス頻度が高いファイル群を配置すると、性能がガタ落ちしてしまう。
理想をいえば、OSに専用のドライブをひとつ、データ用にRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)、あるいはSAN'(Storage Area Network)を活用する高性能ストレージ、という配分にしたいところではあるが、費用や負荷状況との兼ね合いもある。負荷がさほど多くなければ、同じハードディスクでパーティションだけ分ける、あるいはハードディスクを別々にする、といった程度で済ませることになるだろう。
ちなみに、Windows Server 2008をセットアップすると、それだけで9-10GBほどのディスク容量を消費する。さらに、サーバ製品をセットアップしたりセキュリティ修正プログラムを導入したりすることを考えると、C:ドライブを少なくとも100GBぐらいは確保しておきたいところだ。
DVD-ROMを使用するセットアップの概略は、以下のようになる。
1. コンピュータの電源を投入して、DVD-ROMをドライブにセットする
2. 「Boot Type」の選択を求めてきた場合、「1」を入力してから[Enter]キーを押す
3. 画面に「Press any key to boot...」を表示したら任意のキーを押して、DVD-ROMからセットアッププログラムを起動する(ハードディスクからOSを起動できない場合には、自動的にDVD-ROMからセットアッププログラムを起動するので、この手順は発生しない)
4. 最初の画面で、言語、時刻と通貨の表示形式、日本語入力方式の選択を行う。通常、ここで変更する必要はないので、そのまま[次へ]をクリックして続行する
5. 次の画面で[今すぐインストール]をクリックする
6. 次の画面で、プロダクトキーを入力する。このとき、5桁ごとのハイフンが自動的に入るのは、他のWindowsと同じだ。Windows Server 2008では、この作業を後回しにすることもできる
7. 次の画面で、ライセンス条項を確認する。目を通した後で[条項に同意しました]チェックボックスをオンにしてから[次へ]をクリックして続行する
8. 次の画面で、[アップグレードインストール]と[クリーンインストール(カスタム)]の別を選択する。もっとも、ハードディスクが空白であれば後者しか選択できない
9. 次の画面で、セットアップ先のパーティションを選択する。選択肢は以下のようになる
- ハードディスクが新品の場合 : [新規]をクリックして、作成するパーティションのサイズを指定する。パーティション作成後に、そのパーティションを選択して[フォーマット]をクリックする
- すでにパーティションがある場合 : 目的のパーティションをクリックして選択する。内容を消去するときには、[フォーマット]をクリックする
- 既存のパーティションを削除して再設定する場合 : 削除したいパーティションをクリックして選択してから、[削除]をクリックする。以後の操作はパーティションがない場合と同様
- 既存のパーティションでは容量が足りない場合 : 未使用の領域が残っていれば、[拡張]をクリックして、パーティションを拡大できる。未使用の領域がなければ、既存のパーティションを削除して再設定する必要がある
10. 目的のパーティションを指定して[次へ]をクリックすると、DVD-ROMからファイルをハードディスクにコピーする作業を開始する。この後は、ファイルをコピーする作業や再起動する作業を自動的に進めていく
11. セットアップが無事に完了すると、Administratorアカウントでログオンする際に使用するパスワードを指定する画面を表示する。ここでパスワードを指定しないと先に進めないようになっているのが、サーバOSらしいところだ。なお、ここで指定するパスワードは、複雑さの要件(大文字・小文字・記号・数字を混ぜる)を満たしている必要がある
12. 同じパスワードを確認のために二度入力して、両者が一致していれば、設定完了となる
こうしてセットアップを完了した段階では、ユーザーアカウントはAdministratorしか存在しない。また、Windows Server 2008の特徴として、コンピュータ名はランダムなものを自動設定してあり、IPアドレスはDHCPによる自動構成になっている。これらの設定を変更するだけでなく、ライセンス認証やWindows Updateといった作業も必要になるのだが、それについては次回に解説しよう。
まず実験してみよう
もしも、セットアップの手順、あるいは次回以降に解説する初期段階の設定作業手順などに自信がなければ、いきなり本番環境の構築に取りかかるのではなく、まず実験してみるのがよい。実験用のコンピュータだけは用意しなければならないが、WindowsサーバそのものについてはTechNet Onlineからダウンロードできる体験版を使用する手もある。
何事もそうだが、おっかなびっくりで恐る恐る(?)操作するよりも、実際に使って経験を積んで、自信を持って臨む方がミスしにくい。といっても、慣れから来るミスというものもあるので、話はそう単純ではないかもしれないが。
実験する際の注意点は、既存の環境に悪影響を及ぼさないようにすることだ。そのため、実運用環境からは物理的に切り離して、独立した状態でサーバを設置したり、場合によってはクライアントPCも設置したりして、そこでひととおりの操作を試してみる。こうすれば、本番環境を立ち上げる際のトラブルを回避しやすくなるし、しかもその際に周囲に迷惑をかける気遣いも要らない。安心して実験できる環境でいろいろ試すことは、経験値を手っ取り早く上げるための秘訣だ。