この5年程の間に世の中は大きく変わった。誰もがスマートフォンやタブレット端末を常に携帯してモバイルで活用しており、クラウドサービスやソーシャルメディアも当たり前のように利用されるようになった。

そしてそれらのサービスの裏側では、ビッグデータ分析などの新たなテクノロジーが活かされている。さらに昨今では、IoT(モノのインターネット)やスマートマシンなど新しい波が押し寄せて来ており、コンシューマーだけではなく企業ITの世界も大きく変わりつつある。

そうした背景を受けて、これからの企業のIT部門はどのような役割を担うことになり、またそれに向けた製品/サービス選定の際に必ず抑えるべきポイントはどこにあるのか、ガートナー ジャパン リサーチ部門 バイス プレジデント、鈴木雅喜氏に話を聞いた。

デジタルビジネスという新しい波をどこまで理解し、対処を進められるか

ガートナー ジャパン リサーチ部門バイス プレジデント 鈴木雅喜氏

「今後、企業のIT担当者が製品やサービスを選定する前にまず抑えるべきキーワードが『デジタルビジネス』です。この新たなトレンドをどこまで理解しているかが非常に重要になってくるのです」──開口一番、鈴木氏はこう訴えた。

数年前よりガートナーは、モバイル、クラウド、インフォメーション/ビッグデータ、ソーシャルの4つの力が1つになる「力の結節」(Nexus of Forces)が、世の中を変えると主張しており、さらにここにIoTやスマートマシンなどの新しく革新的なテクノロジー群が加わっている。こうした新たなものを中核とする広範なテクノロジー群のことを「デジタルテクノロジー」と総称している。

実際、日本企業の間でもデジタルテクノロジーへの関心はすこぶる高い。昨年夏にガートナーが行った調査によると、「2020年までの間にデジタルテクノロジーは日本企業のビジネスにどのような影響を及ぼすか」との質問に対し、84.7%もの回答者が「大きく変わる」としているのだ。日本の社会がデジタルテクノロジーによってこの先大きく変化していく可能性は相当に高いと言えるだろう。

デジタルビジネスとは、このデジタルテクノロジーを用いてビジネスの仕組みを変えていくことである。言い換えれば、現実の物理的な世界に「デジタル」を入れ込み、その境界を曖昧にすることによって、新しいビジネスデザインを創造することだ。

「これまでのITは、主に情報を処理し、それを人が見て判断し、実際に人が行動を起こす、というものでした。これからは、判断、行動といった領域にまでデジタルテクノロジーが入り込んでくるでしょう。情報を得てから行動を起こすまでのスピードは圧倒的で、瞬時のうちに無数のビジネス機会が生まれる世界がそこまで近づいています」(鈴木氏)