「企業に蓄積された膨大なデータを、いかに有効活用するか」――これがビジネスの成否に大きな影響を与えることは言うまでもない。そこで昨今、注目を集めているのが、ビッグデータの分析を得意とするAIだ。しかし、その知見や活用スキルを備えた人材の不足は著しく、いずれの業界においても頭を悩ませている企業は少なくない。
こうした背景を踏まえ、機械学習の自動化プラットフォーム「DataRobot」を展開するDataRobot社は11月10日、メディア向け説明会「金融業界におけるAI活用の重要性とDX推進の現在地」を開催。三菱UFJ信託銀行、三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)からAI活用を推進する担当者らが登壇し、AI導入のインパクトや社内でAI活用を進めるための勘所などについて語った。
AI CoEの「4つのポイント」- 三菱UFJ信託銀行
三菱UFJ信託銀行では2019年10月、外部ベンダーおよび三菱UFJトラストシステムの協力を得て、業務IT企画部内にAI/データ分析のCoE組織を立ち上げた。当初から、DataRobotを活用し、2020年10月には三菱UFJトラストシステムと共に内製化。その後、2021年4月に経営企画部へと所属を移し、現在に至る。
登壇した同行 経営企画部 デジタル企画室 上級調査役 岡田拓郎氏は、「AI CoE組織には『戦略』『収益』『育成』『社外交流』の4つのポイントがある」とし、このうち戦略と収益について解説していった。
デジタル化が進む今、信託銀行においても個人情報や各種トークン、デジタルコンテンツなど、新たな権利保護対象が増加しつつある。こうした状況を踏まえ、「顧客にさらなる付加価値を提供していく上で、AIは必須であり、戦略上重要だと考えている」と岡田氏は語る。
同氏が、信託銀行がAIを使って実現できることとして挙げたのが、「マーケティング」「コンサルティング」「マーケット予測」「事務自動化」の4つだ。なかでも「最重要分野はマーケティング」だという。具体的には、大量の情報から顧客のニーズを分析し、パーソナライズ化した商品レコメンドを行う部分にAIを活用する。
AI活用を進めていく上では、社内のITリテラシー向上も欠かせない。岡田氏は「取り組みにあたっては、育成・研修を重視している」と説明する。
「マネジメント層60名を対象に研修するほか、毎年全社員に網羅的にAIやデジタルの研修を開催しています。全社の(AIスキルの)底上げと上層部の理解度向上が狙いです」(岡田氏)
新しい試みとして企画するのが、MUFGグループ横断でデータサイエンスコンペティションだ。ビジネス課題に対し、機械学習によるAIモデルの精度を競うもので、グループ13社から150~200名程度が参加する予定だという。一般に公開されている機械学習コンペとしては「Kaggle」や「SIGNATE Competition」などが知られるが、岡田氏曰く「その”MUFGグループ版”」である。
「まずAIやプログラミングについてオンライン学習し、その後、課題に挑んで競っていきます。『今までデータサイエンスに関心がなかった銀行員が、コンペで入賞してデータサイエンティストの”タマゴ”になる』といったシナリオが考えられるのではないかと、非常に楽しみにしています」(岡田氏)
続いて登壇した同行経営企画部 デジタル企画室 西潟裕介氏は、2020年7月にAI担当となった当初、データ分析の知識・経験はゼロだったという。そんな同氏からは、実体験と共にAI企画人材への道のりについて語られた。