「いいちこ」で知られる伝統ある総合醸造企業、三和酒類。同社では2019年よりRPAの導入を進め、業務の効率化を進めてきた。さらに最近ではAIの活用にも取り組むなどDXを推進している。

一見するとデジタルとは縁遠く思える酒造メーカーが、なぜ最先端のテクノロジー導入を始めたのか。9月8日に開催された「UiPath AI EXPO 3.0」に同社 サポート本部 システム室 副部長 山本崇広氏が登壇。RPA、そしてAIに取り組んだ背景と、導入の成果について語った。

年間2万枚に及ぶFAX注文をRPAで自動化

三和酒類についてはご存じの方も多いだろう。麦焼酎「いいちこ」をはじめ、清酒やワイン、ブランデー、リキュールなどを幅広く手がける総合酒類メーカーである。

山本氏はそんな三和酒類に1998年に入社。物流担当を経て99年に情報システム担当となり、10年間、社内システムの構築やネットワーク管理などに携わってきた。その後、営業を経て再び情報システム担当となった山本氏は現在、RPAの導入やAI活用を通した業務プロセス改革に取り組んでいる。

RPAを導入するきっかけとなったのは、顧客からの受注業務だ。すでに受注の8割はオンライン経由になっているが、まだFAXでの注文も一部あり、注文用紙を目視で確認しながら受注システムに登録する必要があった。

人がチェックするとなるとどうしても手間がかかる。特に年末など繁忙期は残業も発生するし、チェックが遅れるとその後の作業も全て遅れるという課題があったという。

そこで山本氏が取り組んだのが、FAXの自動読み込みと、データの登録をAI OCR、およびRPAで行うという方法だ。

まず、注文を受けたFAXを複合機でスキャンしPDF化。その後、OCRでテキストデータ化し、RPAでCSVデータを統合して基幹システムに自動入力する。そして、RPAで運送会社への連絡を行い、出荷作業を完了するという流れだ。

この取組みにより、これまで1年間で2万枚に及んでいたFAXの処理の自動化に成功。年間1200時間の作業時間削減を見込んでいる。

念のため、現在も人手によるダブルチェックは継続しているというが、それでも入力ミスのプレッシャーから解放された効果は大きく、「担当者の精神的負担を大きく軽減できた」(山本氏)という。