一般的に、「バックオフィス」とは総務や人事、経理、広報、購買、法務、情シスなど、いわゆる間接業務を担う組織を指す。そして、昔ながらのレガシーなバックオフィスは、時として企業の成長を妨げる一因ともなるのは言うまでもない。
9月9日に開催されたTECH+フォーラム「バックオフィス業務改革 Day 2021 Sept.本質的な企業改善から導く『働き方改革』主導法」では、あまねキャリア 代表取締役の沢渡あまね氏が登壇。「『バックオフィス2.0』これからの管理部門のあり方」と題し、企業の屋台骨を支える管理部門が、どのように進化すべきかについて解説を繰り広げた。
まずはコラボレーション型への変革を
「進化できるバックオフィスは、組織の成長を牽引する役割を担う。いわば”バックオフィス2.0”をこれからの管理部門は目指していかねばならない」――登壇した沢渡氏は冒頭、こう断言した。
その最初の一歩ともなるのが、組織全体がコラボレーションできるよう後押しすることだ。それはつまり、バックオフィス業務のオープンシフトやデジタルワークシフトを実現することでもある。
では、具体的にどうすればよいのだろうか。それにはまず、これからの時代がどのような時代になるのかを考える必要がある。
従来、多くの日本企業は統制型(ピラミッド型)であり、トップダウンの体制に基づいた組織モデルを取り入れていた。これは旧来の日本の製造業が最適化してきたモデルであり、ピラミッド構造と人海戦術による大量生産、大量消費、かつ終身雇用を前提とした制度やカルチャーにより強みが発揮されていたのも確かだ。
しかし、これからの時代においては、コラボレーション型のイノベーションモデルへの変革が強く求められる。そしてこのコラボレーション型のモデルでは、社内だけではなく他社や業界他社などともつながりながら、情報共有をオープンに行い、アジャイルに仕事を進めていくことになる。
「統制型一辺倒の仕事のやり方やマネジメント、環境、カルチャーが、トランスフォーメーション(改革)を遠ざけるどころか、事業継続性をも阻害してしまっています。我々はそろそろ、そうした認識を持つ必要があるでしょう」(沢渡氏)
オペレーション業務とクリエーション業務に求められるもの
今、多くの組織がDXのような”変革”を求めている。そこまでではないとしても、既存の事業の改善/改良は常に追い求めているだろう。だが、固定的な環境では、イノベーションどころか改善/改良すらも難しいものだ。
沢渡氏は「イノベーションや改善/改良は固定化された景色からは生まれにくい。テーマを設定し、意識のアンテナを立てながら、時に景色を変えて内省したり組織内外の人と対話したりしながらヒントや解決策を得て、自分なりに答えを出していくことが重要となる」と説く。そうしたなかでこそ、イノベーションや改善/改良につながるようなひらめきが生まれる瞬間もある。
「しかし、そうしたひらめきを得るためには、固定的な環境で常に目先の仕事に追われていてはいけません。コラボレーションをしながら行動し、解決していけるような”余白”や”余力”も必要です。旧態依然とした固定的な環境のまま、いつものオフィスに張り付いていては、新しいサイクルを回すことは難しく、DXや改善/改良は生まれないでしょう」
確かに、オペレーション業務というのは事業の軸であり、緊急度は高い。しかし、それだけでは、目先の成果に目が向きがちになってしまう。一方、DXやイノベーション、つまりクリエーション業務では、いったん既存事業から離れたところから全体を見渡し、考えることが大事になってくる。そうなると、目先の成果が見えにくい分、中長期を見据えた投資や議論、育成が必要だ。そしてオペレーション業務とクリエーション業務では、求められるスキルやメンタリティ、マネジメントもまた異なるのである。
「にもかかわらず、既存事業を回すことに最適化された体制や環境のまま、無理やりイノベーションを生み出そうとしてはいないだろうか」と沢渡氏は問いかける。
「場合によっては(既存のオペレーションを回す組織と、クリエーションやイノベーションを求める組織で)体制やマネジメントや人事評価制度を分ける、あるいは変革を生みやすい人材を取り入れていく必要もあるのではないでしょうか。そうした議論を経営者と現場とで正しく交わせるように変わらなければならないし、バックオフィスも”統制型”のみを支える組織から、”オープン型”を支える組織に進化しなければなりません。そのためには、まずは外を見ることも大事。先進的な企業のバックオフィスは、どのような役割を果たしているのか? どう行動しているのか? 外を見てディスカッションしてみてほしいです」(沢渡氏)