アステリアは8月2日、熊本県阿蘇郡小国町がモバイルアプリ作成ツール「Platio(プラティオ)」で作成した「被災状況報告アプリ」を導入したと発表した。
Platioは、モバイルアプリをノーコードで作成/活用できるというもの。勤怠連絡や発注業務管理、ヒヤリハットの記録などさまざまな現場を想定した100種類以上のテンプレートを提供しており、これを編集することで、自社の業務に合ったアプリを作成することができる。なお、9月1日の防災の日から、今回小国町が作成した被災状況報告アプリを基に改良したテンプレートが標準テンプレートへ追加される予定だという。
発表会には、小国町 町長 渡邊誠次氏とアステリア 代表取締役社長 平野洋一郎氏が登壇。アプリ導入の経緯を説明するとともに、今後の展望が語られた。
過去の経験から模索した災害対策
2016年、熊本県と大分県で相次いで発生した熊本地震では、九州各所で災害が発生し、多くの人々が避難生活を余儀なくされた。また、小国町では2020年7月、記録的な豪雨により800カ所以上で水害が発生し、家屋への浸水や道路の分断など、至るところで被災が見られた。
登壇した渡邊氏は、「気候変動により、防災対策意識の向上は全国多くの自治体が直面する課題となっている。限られた人員数で対応するなら、アナログ業務をデジタル化していくことが不可欠。今回のアプリがその一つとして役立つと思っている」と期待を語る。
昨年の災害対策状況
2020年7月7日、小国町では前日からの豪雨により、朝から役場の窓口には住民からさまざまな災害状況の連絡が届いていた。職員はメモをとり、災害対象を「道路」「家屋」「農地」などに区分して一覧にし、共有していた。
この時点では紙に記入することで把握できていたが、豪雨はさらに激しさを増し、災害状況が拡大。紙への記入では情報の重複が発生し、地区ごとの災害状況が把握しづらくなり、初期対応が完了しているかどうかの確認も難しくなったのだという。
これを改善するために、書き起こした情報をExcelに入力し、場所や種類、状況などを整理して災害対策本部に共有することにした。
これにより、災害状況や件数を的確に確認できるようになったものの、総務課では災害状況を熊本県に報告しなければならない。それには、把握している情報に加えて、地図上における場所の緯度/経度、災害の詳細な情報が必要となる。これらの情報を得るには、現地の状況を確認した人からヒアリングし、現場の写真を提供してもらわなければならず、リアルタイムでの報告は行えなかった。これが、昨年の災害時の対応状況だ。
今年度から、小国町役場では新型コロナウイルス感染症対策の一環としてPlatioを使った検温レポートアプリを導入しており、勤怠連絡アプリについても試験運用中にある。そのPlatioに用意されたテンプレートのなかには、「被災状況報告」のテンプレートもあった。防災を担当する総務課と検温アプリなどを作成した政策課で相談し、試しにパイロット版を作成。使ってみたところ、被災地の場所や写真、災害状況などをリアルタイムで報告でき、Excelで一覧出力した際には地図上の座標まで取得できることがわかったため、6月中旬の梅雨時期までに本格導入する方向で話は進んでいた。
だが、今年の梅雨入りは例年よりも半月以上早かったのである。