日本IBMは6月17日、ユーザー向けの技術解説セッション「IBM Technology Day」をオンラインで開催した。本稿では、日本IBM IBM東京基礎研究所 技術理事の小原盛幹氏による「思考の枠を超える - IBMリサーチが挑むテクノロジーとの未来」と題した特別講演の内容を紹介する。
IBM Researchは、南北アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカ、アジアの世界各地に研究所を展開し、多くの研究はIBMの他事業部や顧客と取り組んでおり、研究員3000人を擁し、75年の歴史を持つ。
小原氏は「IBMは、まさにコンピュータの歴史をリードしてきた。プログラミング言語であるFORTRANの考案、メインフレーム、メインメモリに使われるダイナミックメモリ、データベース、音声認識、磁気ディスク、マイクロディスクのRISCアーキテクチャに加え、物理学の分野でも走査型トンネル顕微鏡、AIの先駆けであるDeep Blue、そして最近ではWatsonや量子コンピュータも手がけている」と振り返る。
特許数に関しても同社は28年間連続で米国での特許取得件数が1位であり、2020年は9130件とGAFAの合計値である7790件を上回っている。
現在のIBM Researchでは「ハイブリッドクラウド」「AI」「量子コンピュータ」「サイエンス」の4分野を重点的に研究しており、同氏は最新の研究トピックとしてハイブリッドクラウドに関する「コンフィデンシャルコンピューティング」と、AIにまつわる「AI高速化技術」について掘り下げて説明した。
小原氏は「クラウドは気軽に使えて便利だが、ミッションクリティカル業務をクラウドに移行するにはセキュリティが懸念されることがあり、コンフィデンシャルコンピューティングはクラウド上の計算を安全に行うものだ。また、AIはディープラーニング(深層学習)が広く使われているが、高度なAIを実現するためには大量の計算が必要となる。エッジ環境でAIを実行することでAIの反応時間短縮やデータの移動を削減できるものの、消費電力に制約があることから、増大する処理時間と消費電力が課題となっている」との認識を示す。