米IBMは5月12日、オンラインによる年次イベント「IBM Think 2021」を開催した。本稿では、米IBM 会長兼CEOのArvind Krishna(アービンド・クリシュナ)氏の「The world’s platform for digital transformation(デジタル変革に向けた世界のプラットフォーム)」と題した基調講演を紹介する。
組織の成功を左右する2つのキーテクノロジー
まず、はじめに同氏は「パンデミックは多くの人たちにおいて、いまだに大きな混乱を引き起こしています。この1年間でテクノロジーの変化が、これほどまでに深く・速く起きたことは記憶にありません。どこを見てもデジタルテクノロジーの力が私たちの経済を根底から覆しています。昨年はGDPが減少しているにも関わらず、デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資が加速した歴史上初めての年になりました」と話す。
実際に、IDCでは今後3年間で7兆4000億ドルがDXに投じられると予測しており、世界経済の10%を占めるという。クリシュナ氏は「2020年は世界が本格的にデジタル世紀に突入し、『ハイブリッドクラウド』と『AI』の2つのキーテクノロジーが組織の成功を左右します」と指摘している。
同社ではハイブリッドクラウドに注力し、ミッションクリティカルシステムを高度なクラウドサービスで近代化するためには顧客の状況を理解することに加え、クラウドのメリットをエッジを含むあらゆる環境で活用できるようにすることに意味があるという。
同氏はハイブリッドクラウドについて「データセンターをクラウドに拡張して、クラウドネイティブのアプリケーションを構築し、バックオフィスやフロントオフィスを結び付けることを可能としています。現状では全体の25%のワークロードしかクラウドには移行していません。一般的には、あるテクノロジーが普及するとすぐに広まります。ハイブリッドクラウドのアプローチは、企業がクラウドに移行することを妨げる課題の克服に役立つため、今後10年間の組織におけるテクノロジー戦略を決定づけると信じています」と述べた。
また、ハイブリッドクラウド戦略はコンピューティングが普及する時代に突入しているとの認識をクリシュナ氏は示しており「プライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジをはじめ、あらゆる場所でコンピューティングが可能になり、またそうしなければならない時代になっています。コンピューティングがあらゆる場所に組み込まれるようになり、ニーズに合わせて調整されます。これがハイブリッドクラウドにより、実現される世界です」と強調する。