コロナ禍をきっかけに、働く場所や時間、タイミングなど、業務を遂行する上でのさまざまな選択権限が組織から個人へシフトした。これにより、ジョブ型の就業制度への注目度も高まっている。こうした流れの中、社内の人材をサポートする総務部は、どのような考え方の下、何をすべきだろうか。
4月22日に開催されたTECH+フォーラム「バックオフィス業務改革Day 2021 Apr.」で、企業の収益性/個人の生産性向上をサポートするエイチ・ピィ・ピィ・ティの代表取締役 坂本裕司氏が、これからの総務部に期待される思考と行動について語った。
「無形資産」が重要視される時代へ
企業にとって重要な資産は、時代が進むにつれて「物的資産」から「人的資産」、そして「知的資産」へと移り変わってきた。高度経済成長期に求められたのは何よりも物的資産だったが、次第に人件費が高騰していくことで、人的資産を確保しなければならない時代へと変化していく。そして、現在では人によって生み出されるアイデアや知識、情報といった知的資産を得るために優秀な人材が求められるようになってきている。
このように、近年では世界的に「有形資産」から「無形資産」へと重きを置く流れがある。一般的に、無形資産は「情報化資産」「革新的資産」「経済的競争力」の3つに分けられる。情報化資産はデータベース、革新的資産は研究/開発、経済的競争力は人/組織の改革と考えるとわかりやすい。
そして、これからの企業の競争優位性は、無形資産の中でも特に経済的競争力が重要であると坂本氏は説明する。さらに、経済的競争力は「人的資産」「組織資産」「ブランド価値」に分けられるが、特に人的資産を強化していくことが求められるという。
「時間を過ごすだけで仕事の結果が出る時代は終わりました。これからは、人の時間の使い方が重要なエッセンスとなります。企業はより無形資産に関心を寄せていくでしょう」(坂本氏)
個人にとっては「自己責任時代」に突入
コロナ禍を機に、社会環境は大きく変化した。個人の働き方も大きく変わりつつある。坂本氏は、「コロナ禍によって個人が手に入れたものは何か?」と問題提起した上で、5W1Hの考え方を使って現況を整理する。
「企業にとってWhyとWhatの競争優位性が高いことはコロナ禍以前と変わりません。しかし、コロナ禍によって、それに続く3W1Hの干渉範囲と優先順位が変わりました。コロナ禍以前は、就業時間とオフィスが固定されている状態で、いつどこでやるかということに関して個人の選択権はなかったため、How、Whoのみに干渉していました。しかし、コロナ禍によってリモートワークが普及し、WhenとWhereに個人の選択の余地ができました。これにより、重要性はWhere、When、Who、Howの順になったのです」(坂本氏)
働く場所や時間、年齢によって仕事が制限される時代が終焉を迎えたことで、個人が実現を目指す仕事の成果やキャリアは、会社が敷いたレール上に用意されるのではなく、責任を持って自分で自由に決められる時代となったと言える。