新型コロナウイルスが世界的に感染が拡大する前の昨年2月、筆者は米Slack Technologies 共同創業者兼CTO(最高技術責任者)のCal Henderson(カル・ヘンダーソン)氏にインタビューを行った。今回、新型コロナウイルスの感染拡大により、米国においてパンデミック、ロックダウンを経験した同氏の考え方の変化や今後の見通しについてオンラインインタビューで話を聞いた。
懐疑的に見ていたリモートワーク
—前回のインタビューから1年が経過しました。昨年1年間を振り返り、どのような生活を送り、世界の状況を見ていましたか?
ヘンダーソン氏:昨年のインタビューはパンデミック前では最後のインタビューになりました。米国では3月からロックダウンとなり、そのときはリモートワークで生産性を向上できるのかという点において、非常に懐疑的でした。
当初は1~2週間のロックダウンだろうと考えていたため、生産性が多少落ちてもオフィスに戻れば大丈夫だろうと感じていました。一方でパンデミックがこんなにも長期間続くとは思いませんでした。しかしながら、私の経験からすると長期間のパンデミックを経験してなお、生産性は向上したと感じています。
人によっては、さらに生産性が向上したと感じる人もいますし、米国の場合、子どもと同居している人は難しい時期もありましたが、オフィスよりは自宅で働くことで生産性が向上したという人もいます。そのため、今後の働き方を見直す必要があるという気づきを得られました。
実際、多くの人がツールを使うことで効率的にリモートワークしたいと感じていたようです。これに伴いSlackのユーザーも増加し、多くの企業が生産性を向上することができたと思います。
1年前はオフィスで仕事をすることを心待ちにしていましたが、実際に1年間リモートワークしたことで現在ではサンフランシスコのオフィスに毎日行く必要性は感じていません。
リモートワークは意味あるもの
—パンデミック下でSlackは、リモートワークでどのように生産性が向上したと感じていますか?
ヘンダーソン氏:Slackのオフィスは世界中に分散しており、大半の従業員はオフィスに出勤して同僚と同じフロアで仕事をすることが日常でした。しかし、パンデミック前からSlackやZoomを利用して仕事をしていました。
仮にパンデミックが10年前に発生していれば、現在のように生産性を向上させることは難しかったのではないかと思います。リモートワークは生産性が向上するか否か賛否両論ありますが、現在はツールも揃っているほか、私自身は意味のあるものだと思いますね。
多くの人がリモートワークすることで、同じ状況で仕事を行うことが可能になりました。一例としてですが、パンデミック前は4人がオフィスから、1人がオンラインから会議に参加することになった場合、状況としてはあまり好ましいものではなかったのですが、パンデミック下においては全員が同じ状況下のため作業がしやすくなったということもあります。
また、人が非同期的かつ効率的に働くことが可能になりました。昨年、われわれが1万人以上を対象に実施した調査結果によると、パンデミックの状況下におけるリモートワークは働く場所を選べることや、働く時間に関しても選択できることが好意的に受け止められているようです。
さらに、インクルーシブ(包摂的)な観点からすれば、さまざまな状況に置かれる多様な人たちが効率的に仕事ができるようになったのではないでしょうか。