SOMPOホールディングスは国内損保事業、海外保険事業、国内生保事業、介護/ヘルスケア事業の4つの事業体を持つ持株会社だ。その売上規模は約3.3兆円と、まぎれもない大企業である。そんなSOMPOホールディングスは今、大きな変革の時を迎えている。
変革を主導するのはグループCDO 執行役常務の楢﨑浩一氏だ。楢﨑氏は「DX or Die」というフレーズを掲げ、SOMPOホールディングスのDXを強力に推進している。
SOMPOホールディングスほどの大企業であれば性急にDXを進める必要はないようにも思えるが、なぜ楢﨑氏は「DX or Die」という強い言葉を打ち出して革新を目指すのか。
2月15日に開催されたWebセミナー「withコロナの成長に向けたデジタライゼーションと経営」に登壇した楢﨑氏は、SOMPOホールディングスにおけるDXの意義と展望について語った。
変化に適応できなければ滅ぶ
「私が入社したのは5年前。SOMPOホールディングスが新たな中期経営計画を策定する時期でした。中期経営計画の目玉となったのは、『安心/安全/健康のテーマパーク構築による社会的価値の創出』を会社としての目標にしたことです」(楢﨑氏)
安心/安全/健康のテーマパークとは、すなわち「事故が起きず、病気にもならずに人々が幸せに生きられる社会」だと楢﨑氏は言う。
この目標は、一見するとSOMPOホールディングスのビジネスと相反しているようにも思える。なぜなら、「事故が起きず、病気にもならずに人々が幸せに生きられる社会」が実現したら、SOMPOホールディングスのビジネスの中核である保険事業が不要になってしまうかもしれないからだ。
しかし、楢﨑氏は「保険が不要になるなら、それで構わない」と断言する。
「その世界では、我々はもしかすると保険会社ではなくなるかもしれません。でもそれでいいのです」(楢﨑氏)
楢﨑氏の言葉の裏には「保険は不幸に遭った人のサポートにはなるが、完全に不幸を消せるわけではない」というジレンマがある。
例えば、火事になって家が燃える、事故で家族が亡くなる、病気で長期入院を余儀なくされる……といった場合、いずれも保険が下りれば金銭的な面では助けになる。しかし、だからといって燃えてしまったものは元通りにはならないし、亡くなった人は生き返らない。仕方のないこととはいえ、現在のままでは提供できる価値が足りないのではないかという思いを楢﨑氏は感じていたという。
そこで策定された目標が、前述の「安心/安全/健康のテーマパーク」である。仮に保険が不要になったとしても、会社として目指すべき世界を実現できるなら、それで構わないというわけだ。
ただし、そんな世界を実現するのは簡単ではない。そこでSOMPOホールディングスが目を付けたのが、シリコンバレーで事業開発や経営に関する豊富な経験を持った楢﨑氏だった。
2016年、SOMPOホールディングスに入社した楢﨑氏はまず、「Disrupt or Be Disrupted(破壊せよ、そうでなければ自分たちが破壊される」というキャッチフレーズを掲げてDXに臨み、順調に取り組みを進めていった。
ところが、2020年に入り世の中は一変する。
「新型コロナウイルス感染症が拡大し、働き方、遊び方、学び方など、全てが大きく変わりました。デジタルでトランスフォームしなければビジネスは立ち行かなくなります。氷河期を迎えた恐竜のように、変化に適応できなければ滅んでしまうのです」(楢﨑氏)
デジタルによる改革を早急に進めなければならない。そう痛感した楢﨑氏はキャッチフレーズを「DX or Die」という強い表現に変え、DXの必要性を訴えたのだ。