2月25日に開催されたオンラインセミナー「マイナビニュースフォーラム 働き方改革 Day 2021 Feb.」では、「ニューノーマルのマネジメント、変化を生き抜く個人と組織のあり方」をテーマに掲げ、変化に対応して成果を出し続ける組織の構築方法や成功のコツについて、有識者による講演が多数繰り広げられた。

特別講演「サクセッションプランとHRBP制度を利用したキャリア自律支援 ~人事制度とキャリア自律の連携~」には、カゴメ 常務執行役員CHO(人事最高責任者)の有沢正人氏が登壇。同氏は、カゴメが進めるサクセッションプラン(後継者育成計画)と、個人の自律的な成長を促す上で有効な「HRBP(Human Resource Business Partner)機能」の内容を紹介するとともに、あるべき未来の”人材戦略”から考える人事制度改革について言及した。

年功序列を捨てた「ジョブ型人事制度」の導入

カゴメでは2013年よりジョブ型人事制度を導入している。その導入目的は、グローバル化のためのインフラ整備や年功序列の是正、メリハリの効いた評価による人件費の適正配分だ。

有沢氏は、「年功序列を廃止したことで、人によっては降格も当然起こり得るが、同時に敗者復活もできるようにした。また、人件費の適正配分というのは決して削減ではない。人件費を『コスト』だとは考えず、人に対する『投資』とみなして、『減らす』のではなく『適正配分する』という発想の転換」と説明する。

かつてカゴメには典型的な年功序列の人事制度が根付いており、役員評価制度に至っては存在すらしなかったという。

「信じられない状況だったが、我々はそこから改革を進めていった」と有沢氏は振り返る。こうした状況から脱却し、グローバルに職務等級人事制度を展開するために、同社ではジョブ型人事制度の導入に向けたプロジェクトを次の2段階に分けて実施したのである。

  • 第1ステージ:グローバル化を推進するための基盤づくり
  • 第2ステージ:グローバルな人材を経営に活かすための戦略人事戦略を展開する

第1ステージでは、まず役員人事制度とグローバル人事制度を構築することで制度の基盤を固めた。役員と部長職を対象にしたグローバルジョブグレードを日本、米国、欧州、豪州に導入したほか、グローバル報酬制度の構築、キーポジションの選定など、ジョブ型人事制度の骨組みを作り上げたのである。

続く第2ステージで、評価ツールの開発/導入や採用のしくみの強化、研修プログラムの開発など、ソフト面の拡充を図っていった。

基盤づくりのポイントは「上(経営層)から変わると同時に外、すなわち海外へも導入すること」と有沢氏はアドバイスする。

グローバル人事制度では、そこで定めるグローバルジョブグレードが、すべての人事施策の基盤となるようにしたという。

制度

「従業員一人一人が異なった考え方を持ち、衝突が起き、その衝突からイノベーションが生まれるのがダイバーシティです。なるべく異なった考え方の人間を集めることが大切であり、相互理解/尊重の土壌づくりといったソフト面と、ハード面となる仕組みづくりを同時に進めることがポイントとなります。合わせて、会社ではなく個人が働き方のオプションを持つことが重要です。人事制度改革のその先に、会社と個人がフェアで対等な関係になることを目指しています」(有沢氏)