「医療を通じて社会に貢献する」を企業理念とし、国内外で医療機器の製造/販売を手掛けるテルモ。人財と組織の活性化を成長戦略実現の重要テーマの1つに掲げ、社員がいきいきと働ける職場環境を目指し、経営層が率先して働き方改革や健康経営を推進している。こうした取り組みは、経済産業省と東京証券取引所が共同で実施する「健康経営銘柄」に6年連続で選定されるなど、外部からの評価も高い。

11月26日に開催された「マイナビニュースフォーラム 働き方改革Day 2020 Nov. 変化に対応して成果を出し続ける組織とは」では、テルモ 執行役員 人事部長 竹田敬治氏が、同社の働き方改革および健康経営に対する活動の軌跡について紹介した。

竹田敬治氏

テルモ 執行役員 人事部長 竹田敬治氏

トップダウン/ボトムアップ双方向から進める働き方改革

テルモでは、成長戦略実現の重要テーマの1つに「人財と組織の活性化」を掲げ、健康経営、働き方改革、ダイバーシティ推進を三位一体で進めることで、個々人の能力を最大限に発揮できる組織づくりを目指している。その柱となるのが、「アソシエイト(社員)の自立と自律」「風通しの良い企業風土」「働きやすい環境」という3つのテーマだ。

「働き方改革の目的は、アソシエイト一人一人の『自立(オーナーシップ』と『自律(セルフマネジメント)』を通じて、組織や個人の生産性向上/活性化につなげていくことです。会社は、アソシエイト自らが自身の働き方やキャリアをデザインし、挑戦できる制度/風土づくりをします。一方で、アソシエイトも自身の働き方を考えて工夫し、成果と生産性を追求していかなければなりません」(竹田氏)

テルモが働き方改革を本格的にスタートしたのは、2017年。36協定の改定や有給休暇の取得促進などの基本的な取り組みだけでなく、社員からアイデアを募る働き方改革コンテスト、年1度の「働きがいサーベイ」などを実施した。

その後、2019年からは時差勤務の導入や、介護/育児などの事由なしに誰でも利用できる在宅勤務制度をスタート。これに加えて、研究開発部門でのフレックスタイム制の導入、通勤手段の拡充・要件緩和、インターバル勤務の実施など、柔軟な働き方を支える制度づくりを進めてきた。こうした取り組みの成果は、有給休暇の取得率向上、労働時間の削減という数字にも現れてきている。

労働時間と有給休暇消化率の推移

労働時間と有給休暇消化率の推移

そして、2020年からは、アソシエイトの自立と自律をより促すために、営業/工場生産職などを除く国内全事業所にフレックスタイム制を拡大。時間ではなく成果を軸にした働き方への転換に挑戦している。

竹田氏によると、同社の働き方改革で意識しているのは、トップダウンとボトムアップの双方向のアプローチで進めていくことだという。

「経営層自らが働き方改革の意義や必要性について発信することは何より重要です。一方で、草の根的な啓発活動を大事にするという意味も込めて、人事発令により働き方改革推進メンバーを約60名選出し、アソシエイトが業務として現場視点での働き方改革を行えるようにしています」(竹田氏)

働き方改革コンテストもボトムアップの取り組みの一例だ。今年は、「Beyond the COVID-19」としてコロナ禍での経験から生まれた工夫やアイデアをアソシエイトから募集したところ、ライフスタイルに関するものを含めて800件を超える提案が集まったという。