日本航空(以下、JAL)は経営破綻した2010年以降、ダイバーシティ&インクルージョンの推進と合わせてワークスタイル改革を段階的に進めてきた。その成果が着実に表れ始めていたところで発生したのが、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行だ。

コロナ禍を経験した今、JALが描くニューノーマル時代の働き方とはどんなものなのか。9月3日に開催されたマイナビニュース スペシャルセミナー「全体生産性から導く『働き方改革』主導法~バックオフィス部門から”新たな生産性を”~」に日本航空 執行役員 人財本部長の小田卓也氏が登壇。同社の改革の歩みと今後の展望について語った。

成功の秘訣は「目的を定め、ロードマップを描くこと」

JALは2010年1月に会社更生法適用を申請した後、会長、社長を務めた稲盛和夫氏、植木義晴氏の下、経営再建を進めてきた。小田氏によると2011年以降、ほぼ毎年社長メッセージを発信し、制度や仕組みを再構築していったのだという。

なかでも2014年以降は「人」に関するさまざまな改革が行われた。2014年には女性活躍推進をメインとしたダイバーシティ、2015年にはワークスタイル改革への取り組みを始め、2017年には再度「ワークスタイル変革に本気で取り組む」ことを宣言してダイバーシティの推進を経営戦略の一つに位置付けた。

「ワークスタイル改革の目的は、社員一人一人が改革で生み出された時間を自己の充実にあて、さまざまな経験を通じて成長することです」(小田氏)

社員の成長により付加価値の高い成果が生まれ、結果として会社の成長につながっていくのだと小田氏は語る。

小田氏

日本航空 執行役員 人財本部長の小田卓也氏

ワークスタイル改革ではさまざまな制度や仕組みの改革が行われた。それまで、まだまだ紙の資料を利用しているシーンが多かったが、クラウド化やノートPC、携帯電話の貸与、TV会議の推奨、オフィスのフリーアドレス化、コミュニケーションスペースの設置などを通じてペーパーレス化を進めていった。

制度面ではコアタイムなしのスーパーフレックス制度を設け、週2日を上限にテレワークも実施。メールや会議、退社時間に関するルールを明確化し、ワークショップを何回も行いながら、社員の意識改革を進めていったという。

ワークスタイル改革が成功したポイントはしっかりとしたロードマップを描いたことだ。改革のための専門組織が旗振り役を務め、先行して改革を行った部門のノウハウをワークショップで全社に共有することで制度や仕組みが定着し、「時間」と「場所」のフレキシビリティを高めていった。