企業内の全てのビジネスプロセスがデジタル化された状態の”デジタルエンタープライズ”企業になるべく、DXへの取り組みを加速する横河電機。具体的にはどのようなアプローチでDXを推進しているのだろうか。7月29日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「失敗と挑戦から導くDX促進の方法論」で、同社執行役員(CIO) デジタル戦略本部長兼デジタルエンタープライズ事業本部DXプラットフォームセンター長 舩生幸宏氏が紹介した。
バイモーダルアプローチでDXに挑む
OT(Operational Technology:製造業における制御システム)とITとの相互連携をどう拡充していくかが横河電機の課題であるとする舩生氏。DX推進の目的について「ノウハウを持っているプロセス産業分野において、オペレーションの効率化を促すDXサービスをタイムリーに出していきたい。既存事業強化/新規ビジネス創出/グローバル最適化の3つの視点から施策を進めているが、その中心にあるのがDX。これまで蓄積してきたシステムにデジタルを加えることで、ワンショットのビジネスからリカーリングビジネスへの変革を目指している」と説明する。
これまでの企業のIT推進は一般的に、事業部別/機能別にボトムアップで進んできたと言える。しかし、舩生氏が話す横河電機としてのDXのあるべき姿は、顧客/社員/取引先のエクスペリエンスをどう高めるかという観点からグローバルにプロセスやシステムを再編していくこと。「現在は、そのオペレーション連携は人間がマニュアルでやらざるを得ないため、必然的に低生産性になってしまう」(舩生氏)ことが、横河電機がDXを進める上で課題になっている部分だという。
こうした課題を解消するため、横河電機ではIT部門をバックオフィス担当のSystem of Record(SoR)、データ分析担当のSystem of Insight(SoI)、顧客/社員/取引先向けシステム担当のSystem of Engagement(SoE)の3つのチームに分類。SoRは、旧情報システム本部が主体となるチーム。SoIは、旧情報システム本部からシフトしたチーム、SoEは、外国人+中途採用により編成したチーム。順に、Mode 1.0、Mode 1.5、Mode 2.0として区別し、バイモーダルアプローチを取っている。
「Mode 1.0とMode 2.0とでは仕事へのアプローチが異なります。Mode 2.0は機敏性が求められますが、Mode.1.0は信頼性が求められます。これらのバランスをどうとるかが重要なポイントです。私が横河電機に入社した2018年当時はMode 1.0が9割程度だったが、この比率を少しずつ下げていくことでバランスを取ろうとしています」(舩生氏)