新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、ビジネス環境が大きく変化した。さらに、働き方改革に関連した各種法改正や「2025年の崖」など、情報システムを取り巻く環境には今後もさまざまな変化が待ち構えており、企業はさらなる業務効率化が求められている。
こうした状況に対し、RPAはどう貢献できるだろうか。6月19日にオンライン開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「RPA業務自動化への道のり-実践企業が明かす成功プロセスと注意点」では、RPAを活用することで感染症対策と業務効率化を両立するためのポイントについて、企業1300社に対する各種調査データの分析結果を基に、ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上由高氏が解説した。
なぜRPAの活用は思うように進まないのか?
岩上氏が所属するノークリサーチでは、ユーザー企業約1300社を対象にRPAに関する調査を実施している。その結果について2018年時点と2019年時点で比較したところ、RPAを導入済みまたは導入予定の企業の割合は、年商100億円以上の企業層では2018~19年にかけて増加しているが、同時期、年商5億円未満の中小企業では減少してしまっていた。
この結果を踏まえて岩上氏は「RPAブームのなか、いったんRPAを導入したがやめてしまったり、導入したいと思っているが慎重になってしまったりしているユーザー企業は少なくない。RPAに対する『誰でも使いこなせる魔法の杖』という喧伝の反動が現れている」と指摘。RPAを導入してみたものの、思ったように活用が進まなかったというケースも多く見られるとする。
岩上氏によると、「自動化できる業務が一部に限られてしまう」「どの業務が自動化できるかわからない」「RPAを導入しても人手による作業をゼロにできない」「RPAシステムの導入/運用負担が大きい」といったことなどが、RPA導入後の主な課題になっているという。
「RPAの活用が思うように進まない要因は、RPAをどのような業務に適用したらよいのかという見極めが難しいことによる」と岩上氏。逆に言えば、RPA導入を成功させるにはどのような業務にRPAを適用させればよいかを的確に判断することが重要となる。
判断のポイントとしては、RPAを適用しようとしている業務が下記3つのうちどれに当てはまるかを意識することだと岩上氏はアドバイスをする。
- データの転記や照合に関する項目
- データの加工や連携に関する項目
- 高度な判断を伴う処理に対する項目
1であれば、単一の業務/システムで完結するが、2の場合は、複数の職責/部門や複数の業務/システムにまたがることが多い。3に関しては、人工知能(AI)分野とも絡めて検討していかなければならない。ノークリサーチの調査結果によると、2018~19年にかけて最も伸びている用途は2だという。岩上氏は「複数の部門/システムにまたがって全体最適ができるような用途を検討したほうがよい」と話す。