業務効率化を実現するツールとしてさまざまな企業が導入を進めるRPA。しかし、継続的に活用範囲を広げていくことは意外に難しく、「実際に導入してみたら思っていた以上に大変だった」という声も少なからずある。

6月19日にオンライン開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「RPA業務自動化への道のり-実践企業が明かす成功プロセスと注意点」にて、RPAの利用を継続的に拡大していくための成功プロセスや押さえておきたいポイントについて、みずほ情報総研 開発本部 第6事業部第6部 マネージャー 潮見茂氏が解説した。

みずほ情報総研 開発本部 第6事業部第6部 マネージャー 潮見茂氏

導入前には役割分担や導入方針を明確に!

これまでに、さまざまな企業のRPA導入支援を手掛けてきた潮見氏。「プログラミング不要でエンドユーザーでも使えるという触れ込みでRPAを導入したものの、『使いこなせない』『継続していくのが難しい』といった声を聞くことが多い」とRPA導入の実情について触れた上で、RPA導入にあたっては「導入前」「導入時」「導入後」それぞれのフェーズに特徴的な課題が発生すると説明する。

では、フェーズごとに順を追って見ていきたい。まずは、RPA導入前。予算やリソースの確保が難しいというRPA導入前ならではの課題は、役割分担や導入方針が不明瞭であることに起因する。

「RPA導入には、大きく分けてシステム部門、推進部署、現場部署が関係します。役割分担/導入方針を策定して運用するのが推進部署。システム部門は動作環境の整備やセキュリティの確保などを担当し、現場部署は適用業務の洗い出しや導入範囲の検討を進めていくことになります。

なお、推進部署はシステム部門が担当しているケースもあれば、現場の特定の部署が担当しているケースもあり、また企画セクションが旗振り役を務めるケースもあるなどさまざま。どれが良い悪いではなく、きちんと役割分担をして動ける状態になっていることが重要です」(潮見氏)

また、開発/運用をどの部署が担うかということも重要な要素となる。塩見氏は、よくある2つのパターンとして、推進部署で集中的に開発するパターンと、業務の主幹部署で個別開発していくパターンを挙げた。それぞれのメリットについて「前者では、推進部署が体制を整備しつつ現場の部署は要望を出す形となり、統制をとりやすい。一方、後者は、推進部署で体制整備や人員育成などの開発支援を行うが、RPAは現場で作って運用していく形となり、作る人と業務をする人が近いため業務の実情に合わせて柔軟に対応しやすい」と説明する。

「独立型」と「共存型」- 2つの導入方式

塩見氏はさらに、RPAの導入方式は「独立型」と「共存型」の2つに分けられるとする。独立型は、RPAの専用端末を設けて集中処理するという方式。共存型は、部署で持っている個人PCにRPAを入れて動作させる方式。いずれにしても、対象業務の特性に合わせてアプローチを選んでいくことが重要だという。

「独立型」と「共存型」

「『このロボットはコスト削減という結果が出ればOK』『ミスを減らして品質を向上したい』『繁忙期に負荷の高い業務を削りたい』といったように、期待した効果や結果を明確にしておくことで、リソースの確保だけでなくモチベーション維持もしやすくなります。全て同じアプローチにしようとするのではなく、導入方針や狙いを明確にした上で個別に検討していくことが大切です」(潮見氏)