コロナショックはビジネスの世界にも深刻な影響を与えている。”ウィズコロナ”と呼ばれるこれからの時代に、マーケティングにおいて企業は難しい舵取りを強いられることになるだろう。

このウィズコロナ時代、マーケターはどうあるべきか。BtoB分野で長くマーケティングに携わり、国内最大級となるクラウドコミュニティ「JAWS-UG」を立ち上げたことでも知られるStill Day Oneの小島英揮氏が5月28日、マイナビニューススペシャルセミナー「顧客と深くつながるために―― BtoBマーケティング最新手法と先進事例」に登壇。これからのBtoBマーケティングに求められるメソッドについて話した。

10年後も変わらない「基本」

Still Day Oneの代表社員であり、パラレルマーケターとして複数の企業を支援する小島氏は、BtoBのIT分野で30年近くマーケティングに従事してきたベテランマーケターだ。PFUやアドビシステムズを経て、2009年から2016年はAWSのマーケティング部門のヘッドとして活躍。同社在籍中に立ち上げた日本最大規模のクラウドコミュニティ「JAWS-UG」の発起人としてご存じの方も多いだろう。

Still Day Oneの小島英揮氏

まさに日本を代表するマーケターの1人である小島氏だが、ウィズコロナ時代を意識せざるを得ない今、マーケターはどうあるべきだと考えているのか。

「マーケターとして最も影響を受けたのはAmazonのジェフ・ベソス氏が語った『今後10年で変わらないものは何か』という言葉です」(小島氏)

マーケターはどうしてもマーケットの変化に着目しがちで、「10年後に市場はどうなっているのか」を考えてしまう。もちろん、それも重要ではあるが、「10年後にも変わらないもの」についても考えるべきだと小島氏は言う。

では、「10年後も変わらないマーケティングの基本」とは何か。

そもそもマーケティングのゴールとは、ユーザーに「知られる」ことではなく、「行動(試す、買う、勧める)をしてもらう」であり、「その行動を続けてもらう」ことだと小島氏は説明する。

また、現実社会で例えるなら「恋愛に似ている」と言う。なぜならマーケティングも恋愛も「誰が相手なのか」が最も重要だからだ。相手によってデートの誘い方もプランも変わる。常に必勝の策があるわけではない。マーケティングも同じだ。どんな優れたキャンペーンや広告も全員に通用するわけではない。したがって、まずは相手を知るところから始めなければならないのだ。

小島氏はマーケティングを設計する要素として下記の3点を挙げる。

  • Who(誰が顧客か)
  • What(何を提供するか)
  • How(どのように伝えるか)

この3点それぞれに「Why(なぜ)」を掛け合わせて施策を考えていくのだ。例えば「Who×Why」であれば、「なぜその顧客なのか?」となる。

マーケティング施策の正しい順番は上記で要素を挙げた順の通りだ。Whoから始まり、What、Howと考えていく。しかし、世の中には意外とHowから始める”なんちゃって”マーケティングも多いのだという。

ここで重要なのが「Who」の解像度を上げてフォーカスする対象を明確にすること。「製造業」や「大企業」といったアバウトなカテゴリーだけでなく、状態や役割にもフォーカスすることでリーチするべき対象の姿がクリアになっていくのだ。

さらに、顧客だけでなく自社の規模によってもアプローチする方法は変わる。例えば、他社を圧倒できる予算があるなら、その資金力に物を言わせた”王者の戦略”がとれる。だが、多くの企業はそうではない。潤沢ではない予算で戦うためには工夫が必要だ。

「孫子の兵法に学びましょう。『敵を知り己を知れば百戦殆うからず』という言葉の通り、相手と自社について把握し、刻々と変わる状況へ対応することが大切です」(小島氏)