オンラインショッピングが当たり前となった今、リアル店舗はどのような戦略で生き残りを図るべきなのだろうか。その答えの一つを示すのが、三井不動産である。
「三井ショッピングパーク」の名の下に、ららぽーとをはじめさまざまなショッピングモールを運営する同社は、2年半前にファッションECモール「Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)」をローンチして話題を呼んだ。
「”リアル店舗共生型”ECモール」と銘打たれたアンドモールの狙いはどこにあるのか。
2月27日に開催された「デジタルマーケティングを味方につける~戦略立案と実践方法~」には、同社で商業施設の開発も経験した後、アンドモールの立ち上げにも参画し、現在はマーケテイングを担当している山上裕之氏が登壇。リアルとデジタルが競合するのではなく、融合することでさらに価値を高めていく考え方について語った。
時代と共に変化する商業施設の「役割」
三井不動産の事業は多彩だ。オフィスビルや住宅を扱う不動産事業のほか、商業施設、ホテル/リゾートなど数多くの施設を運営する。ららぽーとやラゾーナ川崎プラザ、三井アウトレットパークといった名前は、メディアなどで目にする機会も多いだろう。
そんな三井不動産は2017年11月、三井ショッピングパークとつながるファッションECモールとしてアンドモールをオープンした。
一見、リアル店舗と競合するかに思えるアンドモールのコンセプトは「ららぽーととの共生」だ。例えば、店頭在庫の有効活用も期待される効果の1つである。また、2018年からはアンドモールで注文した衣類をららぽーとやラゾーナなどのリアル店舗で試着/受け取りが可能になるサービス「アンドモールデスク」も開始。オンラインとオフラインのメリットを組み合わせ、顧客体験の質を向上させることを狙う。
こうした顧客体験の向上を目指す動きは、リアル店舗自体の運営にも表れている。
例えば、ららぽーとで新作シューズの試着会を行ったり、人気アーティストSonar Pocketとコラボレーションして10周年イベントを開催したりと、単なる商業施設に留まらないさまざまな仕掛けを行っている。
そんな三井ショッピングパークも、当初は単なるショッピングの場としてオープンしたという。核となっていたのはダイエーやそごうだ。品揃えの良さや、全てが揃うワンストップ性を最大の魅力として打ち出していた。
だが、消費者のニーズは時代とともに移り変わってきた。インターネットが普及し、ショッピングだけならオンラインでも可能となった今、商業施設に求められる役割が変化しつつあることを山上氏は敏感に感じ取っている。
「商業施設は単なるショッピングの場ではなく、時間消費や体験の場になってきました。アミューズメントやイベントの開催など、買い物だけでなく楽しい体験ができる場へと変わり、そして現在は時間や体験をシェアする場へと変化してきたのです」
それを象徴するのがラゾーナ川崎プラザのイベント広場だ。通常ならテナントに貸し出したくなる広大なスペースをイベント用に開放することで、消費者の「体験の場」として価値を高めている。また、キッザニアやドッグランスペースなどを設けたり、ヨガイベントやワークショップを開催したりと、買い物だけでなく日々の生活における憩いや楽しみを提供している。
では、商業施設が目指すべき次なる「場」はどのようなものなのだろうか。