日本国内ではもはや「知らない人はいない」と言っても過言ではないアプリとなった「LINE」。コミュニケーションツールとして認知されているが、いまやそれだけでなく、さまざまなサービスを内包する巨大プラットフォームとして成長している。
そんなLINEを強力に支えるのが、蓄積された膨大なデータと、それを分析するAI技術である。
では、具体的にどのようにデータを分析/活用しているのか。2月13日に開催された第136回IT Search+スペシャルセミナーでは、LINE社の執行役員 AI事業統括/LINE BRAIN室 室長の砂金信一郎氏が登壇。同社が取り組む「AI×データ活用」について語った。
プラットフォームとして成長するLINE
講演は「そもそもLINEとはどんなプラットフォームなのか」という話からスタートした。
コミュニケーションアプリとして定着しているLINEだが、その売上のおよそ3割を占めるのは広告収入である。現在、月に1度以上LINEを使用するMAU(Monthly Active Users)は約8,300万人。今も四半期ごとに約100万人ずつユーザー数を伸ばしており、圧倒的なリーチ力が広告プラットフォームとしての強みだ。砂金氏によると、LINE経由でしかアプローチできないデジタルコンシューマーも多いのだという。
そんなLINEは現在、さらにプラットフォームとしての充実度を高める戦略をとっている。これまでLINE PayやLINE GAME、LINEトラベルjp、LINEショッピング、LINE MUSIC、LINEデリマなどさまざまなサービスを立て続けにリリースし、生活のあらゆる場面をLINEでサポートする環境を整えているのだ。
また、外部の企業や開発者が利用できるMessaging APIを公開し、サードパーティアプリも受け入れているほか、優れたサービスには投資を行ったり、賞金付きのアワードを開催したりと、エコシステムの拡大に注力している。
砂金氏曰く、「LINEがプラットフォームとして注目を集めている背景には、スマートフォンの使われ方がある」という。
「スマートフォンで月に10回以上起動するアプリは、9個程度だと言われています。それなら、利用率が高いLINEをプラットフォームとして使ったほうがいいでしょう」
かつてユーザーにとって、サービスへの入口はWebブラウザであり、検索だった。だが、現在ではそれはスマートフォンの「よく使うアプリ」の1つとなっている。中国でもWechatがミニアプリのプラットフォームとしてヒットしているが、日本ではそれがLINEというわけだ。
では、LINEで何ができるのか。
一例として砂金氏が紹介したのが、粗大ごみ収集だ。現在、福岡市ではLINEで粗大ごみの収集申し込みができるようになっており、さらに手数料の支払いもLINE Payで行うことができる。ユーザーはチャットボットと会話しながら粗大ごみの情報を入力するだけ。コンビニ等で粗大ごみ処理券を購入する必要もなく、ごみに必要事項を記入した紙を貼り付けるだけで手軽に申し込むことができる。
また、長野県ではLINEでいじめ相談ができる取り組みが2017年から始まっている。2017年の相談対応実績は2週間で547件。一方、電話による相談件数は年間259件(2016年度)。LINEのツールとしての手軽さが良い方向に生かされた例だと言えよう。