新サービスの作成や製品開発、プロモーション施策に顧客営業……。IT領域で活躍するビジネスパーソンにおいて、「企画力」は必須のスキルだ。しかし、「どうやって企画を立てれば良いのか」「企画書の書き方がわからない」「企画がなかなか通らない」といった悩みを持つ方は多いだろう。
毎月1度、月替わりで朝活を開催しているマイナビは1月、企画経営アカデミー 代表取締役 大槻貴志氏を講師に招き、社内向け勉強会「企画力養成講座」を開催した。「企画」と言われるとつい身構えてしまう方もいるかもしれないが、これまで300人以上の新規事業立ち上げをサポートしてきた同氏によれば、そもそも企画は誰もが日常的に行っている行為の1つであり、難しく考える必要はないという。
とはいえ実際、「通る企画」「通らない企画」が存在するのも事実だ。その違いはどこにあるのだろうか。本稿では、同講座で解説された「通る企画の立て方・伝え方」についてレポートする。
企画力とは「他人を巻き込む力」
「どうやって企画を立てれば良いのか」。そう悩む人は、そもそも企画という行為を重く捉えているかもしれない。
大槻氏は、そもそも「企画」とは、「他人を巻き込むこと」であり、誰しもが日常生活の中で行っている行動だと説明する。
「もし『4千万円の車が欲しい』と考えたとき、みなさんはどうするでしょうか。仮にそれを自分一人の力で購入するならば、それは企画行為ではありません。反対に、誰かにお金を借りて購入するのであれば、それは企画行為にあたります」(大槻氏)
手持ちのお金がなくても、「企画」次第で高級車は手に入れられる。例えば、自身への融資を銀行に提案し、期限を定めてその融資額+αを返済する契約を結べば、高級車を購入するだけのお金を用意できる。融資を受ける条件としては、相手にとって「メリット」となる利息と確実に返済できるという「信用」を示し、納得してもらえればよい。
上記のようなお金に絡むものに限らず、上司や部下を巻き込んで行うこと、クライアントを巻き込んで行うこと、家族を巻き込んで行うこと、それらすべては企画行為となるというのだ。
「企画書」の役割を知る
「企画書をどのように書けばよいのかわからない」。そう悩む人は、まずは企画書の役割を理解するところから始めよう。
企画書とは、実現したい企画を相手に提案する際に必要なもの。その企画に他人を巻き込むために、具体的な実現プランや、提案相手に与えるメリットを説明するものだ。つまりは、それらを集約したものが企画書に盛り込むべき内容となる。
「ここでありがちなのが、『企画書と計画書の違い』を理解せぬままに企画書を書き始めてしまうことだ」と大槻氏は語る。「企画書をA4一枚にまとめて」と言われて困った経験のある人は、そこに書くべき内容を絞り込めていない可能性がある。
企画をA4一枚にまとめるとなると、必然的に書ける内容は限られてくる。例として、ITベンダーがクライアントにCMS(コンテンツマネジメントシステム)を勧めるケースを考えてみよう。その場合、「CMSを導入した後にどう運用するか? 」という話は「計画書」に書けばよい。クライアントが「そもそも導入を検討する必要があるのか」と迷っている段階では、そうした具体的な運用計画の話をする必要はない。
これらの理由から、具体的には企画書に入れ込むべき要素は、以下の5点に絞られる。
まずは、プランそのもの、つまり企画を通して実現したいことの説明。次に、その企画の狙い、それが提案相手にもたらす価値(メリット)。提案相手がアイデアに共感し、OKを出すための理由(企画背景)。提案相手に企画を信用してもらうための裏付け、プロフィールや過去の実績(信用)。提案相手にしてほしいこと、および相手に取ってほしいことのリスク(オファー)の5点だ。
その後の予算管理や人員計画、スケジュールにタスクリストといった要素は、企画書が通った後の計画書に盛り込むべき点ものなので、これらに関しては企画書で触れる必要がない。