若者文化の発信地でもある渋谷のランドマーク・SHIBUYA109。昨年40周年を迎え、ロゴの刷新や若者マーケティングの強化などを進め、時代に対応した新しい商業施設として生まれ変わった。その”裏側”を支えるのは、独自に進めるマーケティング施策と徹底したデータ活用だ。
12月13日に開催された「マイナビニュースフォーラム 2019 Winter for データ活用」では、SHIBUYA109エンタテイメントのMDプランニング部長であり、SHIBUYA109総支配人も務める澤邊亮氏が登壇。SHIBUYA109が推し進めるデジタル戦略について解説を行った。
調査で明らかになった”今”の若者像
澤邊氏は現場運営を経て公式通販サイトの運営などに携わり、現在はオムニチャネル事業部でMDプランニング部長兼SHIBUYA109の総支配人を務める人物だ。
SHIBUYA109と聞くとファッションビルのイメージが強いが、実はそれだけではないと澤邊氏は言う。
「企業理念は『Making You SHINE! 新しい世代の”今”を輝かせ、夢や願いを叶える』で、若者の味方であることがコンセプトです。ですから、商業施設運営だけではなく通販や広告事業などさまざまな事業にトライしています」
そうした新規事業の1つが、若者マーケティングコンサル事業「SHIBUYA 109 lab.」である。
同事業では、around20(15~24歳)に特化した若者マーケティングチームがさまざまな調査や分析を行い、企業のマーケティングと若者の架け橋になることをミッションに活動している。同事業は、カード会員やポイント会員といった会員システムを持たないSHIBUYA109にとって、若者を理解する上での重要なマーケティング手段にもなっているという。
「SHIBUYA109 lab.が行う調査やアンケートは外部の会社に委託せず、スタッフが行っています。週に2回程度グループインタビューをしたり、お客さまにLINEグループに入ってもらってゆるいつながりを作ったりしてマーケティング調査を行っています」
こうした取り組みを通じて、「デジタルネイティブ世代」と呼ばれる昨今の若者像が見えてきたと澤邊氏は語る。
「デジタルネイティブ世代に好きなファッションやブランドを聞いたところ、最も多い回答は『特になし』でした」
この回答こそがデジタルネイティブ世代の特徴を表していると澤邊氏は言う。
デジタルネイティブ世代はスマホやSNSがデフォルトである環境に生きている。コミュニティはリアル社会だけではなくデジタルにも拡大しており、どちらも切り離せない”リアル”だ。
そのような環境に適応した結果、デジタルネイティブ世代には「同調思考が強く」「周囲からどう見られているかを意識している」という特徴が生まれたと澤邊氏は分析する。
「昔は”自分らしさ”とは自分が決めるものでした。しかし、どう見られているかが自分を認識する基準となったデジタルネイティブ世代では、”自分らしさ”とは周囲が決めるものになっているのです」
オンライン/オフラインを問わず複数のコミュニティに属することが当たり前であるデジタルネイティブ世代は、コミュニティに合わせて表現する”自分”を変える。「今日は○○ちゃんと会うからガーリーな服装にしよう」「今日は新大久保に行くから、韓国っぽいコーデにしよう」といった具合である。
「誰と会うか、どこに行くか、何をするか」が大きな判断基準であり、ファッションはその際の自分を表現する一種のコミュニケーションツールとなっている。だからこそデジタルネイティブ世代の好きなファッションは「特になし」なのだ。