昨今は、ビジネスのさまざまな場面にデジタル技術を取り入れて、ビジネスを変革していく「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の必要性が訴えられています。デジタル技術には「機械学習」が含まれており、2000年代以降から現在も「第3次人工知能ブーム」の真っ只中にあると言われています。
特にここ数年は「人工知能(AI)」や「機械学習」に関連する情報を毎日のように目にするようになり、ビジネスにおける機械学習の成功事例の報告も増えています。
その一方で、例えば下記のような悩みを持っている方が少なからず存在するのではないでしょうか?
- 機械学習を取り入れたいが、担い手がおらず導入に踏み切れない
- 機械学習の知識はある程度あるが、実装手段まではわからない
- 有償トレーニングの受講などノウハウ習得に費用をかけられない
そこで本連載では、このような悩みを持つ読者が、パブリッククラウドとしてシェアの高いAWS(Amazon Web Services)が提供するサービスを使って、ビジネスに機械学習を取り入れていく方法を考えていきます。
AWSでは、「Amazonで培った機械学習に関するノウハウをすべての開発者に届ける」というコンセプトの下、多数の機械学習サービスが提供されています。
独自の機械学習モデルを開発/学習/推論したい開発者やデータサイエンティスト向けの「MLサービス」だけでなく、利用者に機械学習のスキルがなくてもデータを用意するだけで気軽に機械学習を実践できる「AIサービス」もあります。
「機械学習に関する特別なノウハウは不要」とは言いつつも、最大限活用していくためには各サービスの概要や使い方、ユースケースなどを理解することが必要です。機械学習サービスの基本事項を整理した上で、読者が持つビジネス課題に取り組む方法を考えていきます。
AWSの機械学習サービススタック/出典:20190924 AWS Black Belt Online Seminar AWS AI Service |
前提事項について
本連載における前提事項は、下記の通りです。
【想定読者】
- ビジネスに機械学習を取り入れたいと考えているシステム開発担当者
- 機械学習に関する基礎的な知識を持っている
- AWSアカウントを持っており、AWSマネージメントコンソールを使って、Amazon S3などの基本サービスを使ったことがある
【目指す状態】
- AWSの機械学習サービスの種類、それぞれのサービスの概要や使い方がわかる
- AWS の機械学習サービスや関連するサービスを組み合わせて、自身のビジネスに活用できる
基礎知識の不足を感じたら
本連載では、機械学習とAWSについて基礎的な知識があることを前提としています。そのため、「機械学習とは?」「AWSとは?」といったそれぞれの基礎的な知識や、AWSの基本的な使い方に関する解説は行いません(当該の記事に関連する技術の解説は適宜行います)。
機械学習に関する基礎的な知識は持っていない場合は、本誌連載「教えてカナコさん! これならわかるAI入門」を参照してください。機械学習の基本について非常にわかりやすく解説されています。
また、AWSはオンラインで多数の学習リソースが提供されています。例えば、下記のオンラインセミナーなどを必要に応じて参照してください。
今後の流れについて
今後は、下記の流れで記事を投稿していくことを予定しています。
- AWSの機械学習サービスの全体像について
- AIサービスに分類される10種類(前出の図の分類で数えた場合のサービス数。2019年11月時点)の個々のサービスの概要と使い方について
- MLサービスに分類されるAmazon SageMakerの概要と使い方について
また、そのほかにも適宜、以下のような内容も織り交ぜていきます。
- 実際のビジネスシーンを想定した例題を設定して、複数のAWSのサービスを組み合わせたソリューションの考察
- AWS re:Inventなどのイベントで発表された新サービスや、既存サービスの新機能の概要/使い方の紹介
次回は、まずは総論としてAWSの機械学習サービスの全体像についてまとめます。
著者紹介
菊地 貴彰 (KIKUCHI Takaaki) - NTTデータ システム技術本部 デジタル技術部
Agile Professional Center
大学・大学院では、機械学習を専攻。ベイズ的枠組みを用いて、複数の遺伝子のデータから遺伝子どうしの相互作用ネットワークの推定に関する研究を行った。
株式会社NTTデータに入社後は、法人や金融のシステム開発のシステム基盤担当としてキャリアを積み、現在はデジタル技術や Agile 開発を専門に扱う組織でシステム開発全般を担当する。
2019 APN AWS Top Engineers に選出。
本連載の内容に対するご意見・ご質問はtwitter: @kikuchitk7まで。