今回は、米Microsoftのインテリジェントエッジ担当者とコラボレーションして開催した第7回勉強会の様子をお届けします。
急遽決定したために直前の開催アナウンスになってしまったにもかかわらず、今回も90名以上の方にご参加いただけました。
Azure Databox Edgeのインパクト
最初に登壇したのは、MicrosoftにてWindows Serverの開発などに携わってきた経歴を持ち、現在はAzure Stack/Azure Databox Edgeを統括するアンドリュー・メイソン(Andrew Mason)氏です。
クラウドとの中継点となるエッジをどのように構成し、どのような処理をエッジで賄うのかがシステム設計のポイントになりつつある今、その解の1つとなり得るAzure Data Box Edgeについて解説していただきました。
セッションのポイント
■Azure Databoxについて
- 大容量かつ機密性の非常に高いデータを安全確実にAzure上に送る手段を提供
- ネットワーク帯域が制限された環境、データ移行によるネットワーク負荷を無視できない環境におけるオフラインでのデータ輸送手段
- データを格納するためのハードウエアがMicrosoftから提供される。機密データを提供ハードウエアに格納後、ハードウエア筐体ごと物理的にAzureのデータセンターへ輸送
- データ量に応じて「Databox Disk」「Databox」「Databox Heavy」と3種類のハードウエアを選択可能
■Azure Databox Edgeについて
- Azure DataboxによるオンラインでAzureへのデータ転送する機能に加えて、FPGAを搭載し、IoT EdgeやCognitive Serviceと連携したMachine Learningなど高度な処理能力を備えた1Uサイズのラックサーバ
- Microsoftがハードウエアを製造/出荷しており、Azureポータルから管理可能
- ストレージはSMBおよびNFSプロトコルに対応し、キャッシュ機能によってAzure Storage BlobやFiles上のデータに高速にアクセス可能
■Azure Databox Gatewayについて
- Azure Databox Edgeの仮想アプライアンス版。Hyper-VまたはVMware上での利用をサポート
- ハードウエア設置不要で大容量データの転送も最適化
- Databox Edgeとは異なり、インテリジェントエッジの機能は未提供
■紹介された主なユースケース
- Hogarth:大規模拠点はAzure Databox Edgeを展開し、小規模拠点はAzure Databox Gatewayを展開。レイテンシー問題から解放された
- CREE:半導体メーカーの事例。半導体の品質チェックに大量の画像データを利用しており、機械学習による故障個所の特定パフォーマンスが格段に向上した
Cree uses Azure Data Box Edge to innovate and grow
- オリンパス:ヘルスケア、手術室のカメラで、手術中に多数のカメラから得られる情報をAIや機械学習によってリアルタイム分析し、不測の事態に対処する。
- Kroger:店内のカメラでカート内を把握し、Azure Data Box Edgeを使用してリアルタイムに分析し、商品棚にある製品のおすすめ候補の提示や、ビデオ分析によって在庫切れをすばやく特定して機会損失を削減している。
MILL5 and Olympus use Azure Data Box Edge to deliver real-time data to operating rooms
- ESRI:Azure Databox Edgeを活用することで、現場上空、または地上から撮影した画像を収集し、それを実用的な情報に変えて地図を更新可能。現場のチームは、指令センターから完全に切断された場合でも、更新された地図を使用して対応作業を調整することができ、山火事や台風といった状況で有効な対応を実現する。
上記にも挙げた通り、Azure Databox Edgeの事例が多数紹介されました。筆者が特に印象に残ったのは、日本企業の事例だということもありますが、ヘルスケアにおける事例です。
医療という命を扱う現場、刻一刻と変わる状況に適切に対処するには、熟練の医師の経験とインテリジェントなエッジコンピューティングを組み合わせて取り組むことが有効であると改めて気付かされました。
Azure Stackの”今”
続いて登壇したのは、MicrosoftでAzure Stack やData Box Edgeを含むインテリジェントエッジのエコシステムを担当するヘンリー・ヘレス(Henry Jerez)氏です。同氏は、Data Box Edgeの登場で立ち位置がより明確になったAzure Stackの”今”について語りました。
セッションのポイント
■Azure Stackについて
- Azure StackとAzure Data box Edgeによって規模の大小や業種を超えて一貫性を持ったハイブリッドクラウドソリューションを全てカバーしている
- IoTの膨大なデータ処理やMachine Learningによる結果を遅延なくリアルタイムで享受できる
- Azure StackはDocker、Kubernetesといったコンテナ技術、コンテナオーケストレーション技術に対応している(Kubernetes on Azure Stackは現在パブリックプレビュー)
■紹介されたユースケース
- PTC:産業用IoT(Industrial IoT)ソリューションを手掛けるPTCは、「ThingWorx」というサービスをAzure/Azure Stackで展開している。工場に存在する多数のセンサーデバイスから取得したデータは、Azure Stack上のIoT HubやCognitive Services、機械学習モデルによって解析可能であり、結果を瞬時に得ることができる。
- SKテレコム:5Gネットワークによって現在よりもはるかに多くのデータがやり取りされる。それらの処理を基地局内で完結させるためにAzure Stackを採用している。
ヘレス氏は、Azure Stackを活用したAIソリューションを手掛けるパートナーを継続的に募集しており、今回の勉強会におけるフィードバックも非常に重要視している様子が垣間うかがえました。
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今回も勉強会全体を通して匿名投稿サイトによる質問を受け付け、同時通訳を交えてその場で直接、メイソン氏、ヘレス氏が回答する時間を設けました。
今後も国内外問わずさまざまなポジションの方を講師に招聘し、体験/価値を共有できる勉強会を目指していきたいと思います。8回目となる次の勉強会は、11月14日(木)に開催されることが決まりました。同勉強会では、11月4日~8日にかけて開催中のMicrosoftの年次テックイベント「Microsoft Ignite」の最新フィードバックをお届けする予定です。
お申し込みはConnpassで開始していますので、皆さん奮ってご参加ください!