インフォマティカ・ジャパンは9月6日、「Informatica World Tour 2019 データとAIが切り拓く、DXの新時代。」を都内にて開催した。その特別講演には日立物流 IT戦略本部 担当本部長の佐野直人氏が登壇。「デジタル事業基盤によるロジスティクス・イノベーション」と題した講演を行った。

DXを推進せよ! 物流業界の「今」

日立物流が推進するデジタルトランスフォーメーション(DX)は、3PL(サードパーティロジスティクス)事業のデータや顧客の計画情報などを総合して、「顧客サプライチェーンの最適化支援」「同社事業の生産性改善」「協創パートナーとの新規ビジネス創出」の3つの目標を掲げて展開しているという。講演では、その中核となるデジタルビジネス推進組織とデータマネジメント組織の役割、そして、同社が構築するデジタル事業基盤の機能やユースケースが紹介された。

サプライチェーンの激変や市場/消費の変化、少子高齢化による労働力不足などの動向を受けて、今、物流業界でDXは大流行にあるという。

「特にドライバーや作業員などの労働力不足を何とかカバーしようと、IoTやAIなどの活用が進められています。いまや物流業は、従来の労働集約型の産業から、装置産業へと変わりつつあると言えるでしょう。アマゾンや大和ハウスといった異業種やスタートアップも参入し、業界全体が活況を呈している状況にあります」(佐野氏)

日立物流 IT戦略本部 担当本部長の佐野直人氏

デジタルイノベーションによるロジスティクス革新の内容としては、IoT、AI、ロボティクスの普及により倉庫内の運搬や保管、ピッキング、梱包などが装置化されることや、IoT、AIによる安全運行管理、貨物トラッキング、車両マッチングなどのシステム化、そしてIoTやモビリティ技術、ビッグデータによるサプライチェーンの可視化が挙げられる。

「こうしたことを実現するには、自社データはもちろん顧客からもデータをもらい、場合によってはAIなども活用して可視化するビジネスを目指していかねばならないと考えています」(佐野氏)

日立物流では2017年に本格的なデジタルビジネスへの取り組みを開始するに当たり、まず社内で利用しているシステムに関する調査を実施。データ基盤構想を策定した上で簡易版をスクラッチ開発してPoCを実施した。

「やはりETLの延長でただデータを集めてもデータマネジメントはできないと気づきました。そこで、1年前からデータマネジメント分野のコンサルタントやSIerに先生になってもらい、指導とレビューをしてもらうようにしました」(佐野氏)

まずは、データマネジメントのスキルの習得から再スタート。続いて、データ活用による成果を出すこと、つまりビジネスに貢献するために、業務改革策を明確にし、なぜリターンを生み出せるのかをシンプルに説明できるロジックや業務知識、業務システムへの理解が不可欠であることなどを学んでいったのである。

※ 3PLとは、調達、生産から、販売や流通、アフターサービスまで、顧客のサプライチェーンのさまざまなステージにおける物流業務の包括的なアウトソーシングのこと。