元芸人の転職サポートや、ビジネスコミュニケーションにお笑いを取り入れた「コメディケーション」研修など、”お笑い”をキーワードにした事業を展開する株式会社俺・CEOの中北朋宏氏。本誌スペシャルセミナーでも2度登壇し、非常に高い来場者満足度を記録している。
実は中北氏自身も、お笑い芸人として6年間活動した経験を持つ”元芸人”である。芸人を引退後、中北氏は人事コンサルティング会社などを経て2018年2月に株式会社俺を創業、今年6月に「「ウケる」は最強のビジネススキルである。」を上梓した。
笑いの力でビジネスコミュニケーションを変えようとしている中北氏。その半生について伺った。
名刺交換からすでにスタートしている!!
――本日はよろしくお願いいたします。
中北 : こちらこそよろしくお願いします。名刺をどうぞ。
――うわ! 何ですかこの名刺!?
中北 : これが私の名刺なんです。著書のなかでもアイスブレイクの大切さについて書いているのですが、私の場合は元お笑い芸人という経歴を生かして巨大名刺でアイスブレイクしています。たいていの場合、「でかっ!」というリアクションをいただくので、「必要なところだけちぎってください」とお伝えしています。
――これはたしかに笑いが生まれて場が和みそうですね。
中北 : ただ、これだけだと単なるボケで終わってしまうので、さらにこう続けます。「弊社の事業はすべてにお笑いがからむので、この名刺にリアクションしていただけない方はターゲット外なんです。今日は笑っていただけたので、良い商談になりそうです」と。
――なるほど、スムーズにビジネスの話へと入っていけますね。
中北 : もっとも、本当にありがたい話なのですが、最近は本も出させていただき、メディアにも取り上げていただくことが増えたおかげで、名刺を出したときに「これ、ほしかったんです!」と言われることが多くなりました(笑)。
――ネタバレしてしまっているわけですね(笑)。
芸人を志し、諦めた理由
――さて、まずは中北さんが代表を務めていらっしゃる株式会社俺の事業についてお伺いします。先ほどのお話では御社事業の「すべてにお笑いがからむ」ということでしたが、具体的にはどのような活動をなさっているのでしょうか。
中北 : 弊社は「世の中を今よりもちょっと面白おかしく」というミッションを掲げ、「夢諦めたけど人生諦めていない人のセカンドキャリアのインフラを創る」をビジョンに3つの事業を展開しています。
元芸人や俳優、アイドル、ミュージシャンの転職をサポートする「芸人ネクスト」事業。研修やコンサルティングを通して元芸人ならではの笑いのスキルをコミュニケーションに取り入れる「コメディケーション」事業。そして元芸人の企画力で社内イベントをプロデュースする「企画の相方」事業です。
――転職サポートや社内研修に元芸人ならではのエッセンスを取り入れることで唯一無二の事業になっているわけですね。今回はまず、中北さんがどのようにして現在に至ったのかというお話から聞かせてください。
中北 : 私は三重県伊勢市という場所で生まれ育ち、小さい頃からお笑いが大好きでした。皆を笑わせることばかり考えていて、小学2年生の頃にはもう自分はお笑い芸人になるんだと決めていました。
その後、大学を中退してNSC(吉本興業の養成スクール)に入り、お笑い芸人への道を歩みだすのですが、お笑い芸人ってものすごく競争率の高い世界なんです。
――たしかに厳しい世界だというイメージはあります。
中北 : 当時はNSCだけで約 1,600人の芸人の卵がいましたが、事務所に所属してデビューできるのは一握りです。そこで私は浅井企画に移り、そこからデビューすることができました。
――芸人は何年ほどされていたのでしょう。
中北 : 6年です。その間、いろいろなお笑いライブに出演したり、東京タワーのイベントのMCをやらせていただいたりとさまざまな経験をすることができました。ただ、27歳のときにお笑い芸人は引退することになりました。
――引退の理由は?
中北 : コンビを解散したことです。もともと私達は「これくらいの歳で、これくらいの位置まで行けていなかったらやめよう」と話していました。私が27歳で、メンバーの一人が30歳になったときに目標を達成できていなかったので、そこでコンビを解散してお笑い芸人から引退したのです。