ガートナー ジャパンは4月23日~25日、「ITインフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス 2019」を都内にて開催した。そのユーザー事例講演では、ダイキン工業 IT推進部 IT企画担当課長 廣瀬忠史氏が登壇。「デジタル変革時代のIT部門に求められる新たな役割とは? ~IT創発グループの挑戦~」と題し、ダイキン工業が推進している「攻めのIT構造改革」の取り組みを紹介した。
“攻めのIT”を推進する「4つのフェーズ」
空調事業を中心に世界150カ国で事業を展開し、売上高は2兆2906億円(2018年3月期)に達するダイキン工業。大阪本社のほか、淀川、堺、滋賀、鹿島などの製造拠点を持ち、2015年には淀川にオープンイノベーション拠点としてテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を開設、新たな取り組みも積極的に進めている。
「モノからコトへ、機器売りからソリューションへと移行を進めています。TICではシリコンバレーや深センオフィスを活用しながら大阪大学や東京大学と連携してオープンイノベーションを推進しており、ダイキン情報大学と呼ばれるAI技術者の育成も進めています」(廣瀬氏)
ITの取り組みについては、IT推進部と機能会社のダイキン情報システム(DKI)が連携して推進する体制を敷いており、国内を統括する日本域ITセンターのほか、欧州、中国、アセアン・オセアニア、北米の各地域ごとに統括センターを設置する。国内で190名、グローバル全体で500名を超える規模の組織だ。
IT戦略は3カ年のIT中期計画に沿って実施されており、2016~2020年の計画では「業務効率化に加え、顧客価値想像の領域へ」「ヒト、モノ、カネ、リスクのグローバルマネジメントの強化」「IT人材の強化」を主なテーマに取り組みを進めている。
「バックオフィス業務だけでなく、モノづくりやソリューションの分野でITを活用し、”攻めのIT”の推進に取り組んでいます。テクノロジーやデータを武器に、より上流からビジネスに貢献することを目指しています」(廣瀬氏)
こうした取り組みを推進する専門組織として設立されたのが、廣瀬氏が所属するIT創発グループだ。その役割は「先進IT技術を常にウォッチし、技術や他社事例をトリガーとしたIT活用テーマの創出・提案・検証をクイックに行うこと(アジャイルアプローチ)」「従来からIT部門が担う業務改善・インフラ整備に留まらず、事業部と組んで直接事業貢献するビジネス改革テーマを企画すること」だ。
2015年からスタートしたIT創発グループの取り組みは、「とにかくスタート」させるフェーズ1、「軌道に乗せる」フェーズ2、「改善しスケールする」フェーズ3、「効果を最大化する」フェーズ4と、大きく4つのフェーズに分けられている。現在はフェーズ3を進めている段階で、さまざまなアイデアをベースに少しずつ実績を作り、構築してきたプロセスをスケールさせているところだ。
「現在は18名+外部5名体制ですが、設立当初は5名+外部1名でした。新しい取り組みをピックアップして業務部門へ持っていくことから始めましたが、実際に業務部門に行くと『AIよりも既存のネットワークのスピードをどうにかしてよ』と言われることも多くありました。また、IT部門に対してネガティブなイメージを持っている方が多く、それを払拭するのが本当に大変で、折れない心とポジティブな姿勢で臨みました」(廣瀬氏)