5月の大型連休も終わり、業務に慌ただしさが戻ってきたという方も多いかと思います。今回は元号も「令和」となって最初の研究会イベントとなった「ハイブリッドクラウド研究会 第4回勉強会」の模様をダイジェストでお伝えします。

4回目を迎えた勉強会は「ゼロから分かるMicrosoftの最新のプラットフォーム戦略! 超初心者歓迎! 」と題し、これからクラウドを利用する方、利用を検討されている方にもハイブリッドクラウドという世界観を知っていただく機会として開催しました。

今回も、毎回好評な匿名質問投稿サイトを活用し、参加者との双方向コミュニケーションを重視。勉強会の冒頭で早速、「この勉強会で持ち帰りたいこと」と題してアンケートを取ったところ、「事例やユースケースを知りたい」「改めてAzure Stackの魅力を知りたい」など次々に回答が投稿されました。

ゼロからわかるMicrosoftのクラウド戦略 - そのキーワードとは?

会場の雰囲気も和んできたところで、日本マイクロソフトの高添修氏によるセッション「Microsoftのハイブリッドクラウド戦略まるわかり!」が開始されました。

日本マイクロソフト パートナー技術統括本部 パートナー ソリューション プロフェッショナル 高添修氏

●セッションのポイント

・Microsoftでは、サティア・ナデラ氏のCEO就任以来、一貫してインテリジェントクラウド/インテリジェントエッジ戦略を推進している

4つのアプローチ

・ハイブリッドクラウドの現状をバードビュー(マクロ視点)で捉えると、以下の4つのアプローチが存在する
 ・ワークロード的アプローチ
 ・ITプラットフォーム的アプローチ
 ・ビジネス的アプローチ
 ・業界的アプローチ

Azure、Azure Stack、Azure Stack HCI

・ITプラットフォーム的アプローチの1つである「Azure Stack」の最大の目的は、社内ITにクラウドとの「Consistency(一貫性)」を持たせることである
・Azure Stackは「Azure」と同様に進化し続けるソリューションであり、利用者側も進化し続けるマインドが重要。一方、市場や取り巻く環境のニーズにも応える必要があり、安定した仮想化基盤を提供するべくHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)も無視できない
・HCI市場に対するMicrosoftの解が「Azure Stack HCI」であり、オンプレミス配置前提でありつつも、Azureとの「Connect(接続性)」によってクラウドの良さも活かしていく
・アプリケーションプラットフォームという点では「Containers」によって場所の概念を超えることができ、ハイブリッドにとっても重要
・Azure、Azure Stack、Azure Stack HCIと、Microsoftではさまざまなニーズに対する解を用意している

真のハイブリッドに向けて

・インテリジェントエッジの例としては、「Azure Databox Edge」や「Azure IoT Edge(AIを含む)」などがあり、「FPGA+Project Brainwave」というMicrosoftのナレッジを活用できるようになっている

・ハイブリッド戦略として、ITプラットフォーム的アプローチに加え、ワークロード別や業種別のアプローチも重視しており、ユーザー視点に立ったソリューション提供を始めている

かねてより筆者は、高添氏から非常に多くのことを学ばせてもらっています。今回のセッションは、「ハイブリッドクラウドも1つの方法論であり、全てのユーザーがテクノロジーをより活かせる社会を目指している」という同氏のビジョンを改めて感じられるものとなりました。

忌憚ない意見が次々に飛び出したパネルディスカッション

「さまざまな立場でディスカッション!Microsoftの最新のプラットフォーム戦略をどう思う?」と題したパネルディスカッションでは、会場から募った質問をテーマに、メーカー、SIer、エンドユーザー、ホスティングプロバイダーの有志が激論を交わしました。

今回パネラーとして登壇したのは、JBS 胡田昌彦氏、レコチョク藤川大氏、日本マイクロソフト高添氏、日本ヒューレット・パッカード(HPE)原聖氏、インターネットイニシアティブ(IIJ)の今中裕介氏の5名の方々です。

写真左からJBS 胡田氏、レコチョク 藤川氏、日本マイクロソフト 高添氏、HPE 原氏、IIJ 今中氏

多数の質問が寄せられたため、90分という時間もあっという間に過ぎてしまった印象だったのですが、なかでも印象深かった質問とその回答をいくつかピックアップしてお届けします。

――Microsoftの視点からAWSのOutpostsをどのように捉えているのか気になります。また、Azure StackとOutpostsについて議論できたらと思います。

藤川氏:Outpostsに関してはAWSとの接続ありきのソリューションだと捉えています。一方でAzure Stackはオフラインでのシナリオにも対応できる点が異なります。

高添氏:Outpostsは、「AWSが提供するクラウドサービス全てを実現するソリューションである」というメッセージを打ち出しています。一方、Azureはあらゆるシナリオに最適化するためAzure StackやAzure Stack HCI、Azure Databox Edgeがお互いに補完し合っています。

――なぜハイブリッドが良いのかも、もう少し詳しくご説明いただければと思います。

藤川氏:特にIaaSを利用する場合などは、全てをクラウドに持っていくとオンプレミスよりコストが高くなる場合があります。一方で、クラウドはデータ保護や災害対策の面で、非常にメリットがあります。

高添氏:ハイブリッドクラウドが最終的なゴールではありませんが、使いたいITを使いたい場所で使える環境を実現する上で、今考えられる解の1つであることは間違いありません。

――AWS、GCPではなく、Azureを選択する決め手は何でしょう?

藤川氏:パッケージ製品を使うのであれば、Windows ServerのIaaSと相性の良いAzureがサポートしてもらいやすいように感じます。

今中氏:エンジニア視点からするとAzure以外の選択肢も興味がありますが、クラウドを販売するパートナー視点ではMicrosoftの支援に手厚さを感じています。

胡田氏:やはり、Office 365を利用していることをきっかけにAzureを採用されるお客様が多いです。

原 氏:長年にわたる企業向けビジネスへの実績があり、人の顔も見えるというMicrosoftならではの安心感がある印象があります。

ここでご紹介したのは、やり取りのごく一部ですが、ハイブリッドクラウド研究会のFacebookグループでは、いただいた質問に対する回答を順次投稿しています。

「質問内容の続きが知りたい!」という方はぜひ、この機会にFacebookグループにご参加ください。

* * *

参加者を巻き込んだパネルディスカッションは、今回も大いに盛り上がりました。当日、イベントを通しての満足度アンケートもその場で実施してみたのですが、非常に満足していただけている様子がうかがえました。

その際、フィードバックされた内容は、以下の資料で公開されているのでぜひご覧ください。


勉強会は今後、参加型のワークショップやハンズオンといったかたちでの開催も考えています。勉強会のスタイル自体も皆さんと共にアップデートしていくような取り組みにしていきたいと思いますので、ご期待ください。

著者紹介

株式会社ネットワールド
Microsoft ソリューション プリセールスエンジニア
津久井 智浩(つくい ともひろ)

ソリューションディストリビューターであるネットワールドの一員として、お客様に付加価値を提供するというミッションの下、Microsoft製品を中心にオンプレミスからクラウドまで幅広く提案~導入を担当。
趣味はバイク。昼散歩が日課。最近は自分よりもカミさんの働き方改革を何とかしたいと苦悩し、マインクラフトを通して子供と一緒にプログラミングを学びたいと願う40代。3児(2女、1男)の父。