家具・インテリアのシェアリングサービス「CLAS」を運営するクラス。代表を務めるのは婚活サバイバル番組『バチェラー・ジャパン』の初代バチェラーとしても有名な久保裕丈氏だ。
CLASは、個人や不動産事業者などを対象に、月々500円~で家具・インテリア・家電の利用・交換が行なえるサブスクリプションサービス。家具購入の初期コストを抑えられるほか、送料や追加費用なしに利用しているインテリア・家具類の交換が可能な点、長く使うほど月額料金が下がる価格設定などが特徴となっている。
昨今注目されているサブスクリプション型のビジネスで、家具・インテリア業界に革新を起こすことはできるのだろうか。トライベック・ストラテジーらが3月1日に開催したプライベートイベント「T-CONFERENCE」の基調講演にて、CLASのブランディング戦略について、久保氏が語った。
“ユーザーペイン”をサブスクリプションモデルで解決
久保氏によると、家具に関してユーザーが感じている課題”ユーザーペイン”をサブスクリプションモデルで解決することがCLASのミッションだという。
家具やインテリアは購入の頻度が低く、ユーザーのリテラシーが醸成されにくいという特徴がある。そのため、自分でコーディネートができなかったり、組み立てが長時間に及んでしまったりするという課題がある。また、家具購入に最適なタイミングとなる引っ越しの際に、他の引っ越し費用がかさんでしまい、家具を新調する余裕がないという問題を経験したことがある人もいるだろう。ライフステージのサイクルが速くなってきている現代では特に、家具を買い替えることができないまま何度も引っ越しを続けている状態になっているケースもある。不要な家具を粗大ごみとして捨てる手続きも面倒だったり費用がかさんだりなど、ユーザーにとって家具にまつわる課題は非常に多くある。
そこでCLASでは、家具の配送・組立・設置までをすべて無料で実施。不要な家具の引き取りも行うほか、交換やリペア、クリーニングなどにも対応している。また、購入やリースに比べてより柔軟な対応ができる法人向けのサービスも提供しているという。
「CLASの本質にあるのは家具の値段を下げることではなく、ユーザーペインの解決」だとする久保氏は、このようにユーザーペインに対するブランドプロミス(提供価値)を明確化することこそが、ブランディングであると説明する。
ユーザーの課題にフォーカスせよ
では、CLASのブランディング戦略について具体的に見ていこう。
まずは「ユーザーの課題にフォーカスする」こと。1-2年で引っ越しを繰り返し、その度に家具を買い替えていたという久保氏は、自らがCLASのようなサービスを強烈に欲しいと思っていたのだという。この経験から久保氏は「ユーザーの本質的な課題に対して、期待値を超える価値を提供しなければならない。新しいサービスのネタ探しをするときには、経営者自身か、または家族など極めて近い人たちが抱えている課題からスタートするとよい」と、本質的な課題を見極める重要性について語る。
本質的な課題にアプローチできないと、提供価値ばかりが上がることになってしまい、”Too much”なサービスになってしまう。一方で、サービス開始時点で本質的な課題にアプローチできていたとしても、提供価値が低ければユーザーの期待値を下回るサービスになってしまう。ただしこの場合は、提供価値を上げる努力をすることで、支持されるサービスへと進化させていける。
久保氏がこう考えるようになったのは、女性向け通販サイト「MUSE & Co.」を設立し、売却した経験からだという。
MUSE & Co.は、衣料品メーカーが抱える在庫をユーザーに安く販売するというサービスだった。サプライヤー側の在庫問題という課題を解決するためにサービスを立ち上げたが、トレンドに乗った良いものを購入したいというユーザー側のニーズを満たすことができず、「中途半端な解決にしかならかった。表層的な差別化での探り合いをしたり、ユーザーの期待値を下回るサービスから脱却することに苦戦した」と久保氏は振り返る。
こうした状況に陥らないようにするため、CLASではD2C型のサービス提供モデルを採用している。「ユーザーの課題のみにフォーカスするのがブランディングのスタート。変わりゆくユーザーの課題を迅速に解決していくことを考えると、巨大な資本を持つ企業以外、プラットフォーマーとなるのは難しい。CLASでは、提携先商品を取り入れつつ、自分自身がサプライヤーにもなってユーザーの課題解消に挑戦していく。すなわち、サプライヤー兼プラットフォーマーを目指している」(久保氏)