ガートナー ジャパンは2月19日~20日、年次カンファレンス「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス & テクノロジ サミット 2019」を東京・品川にて開催した。
そのオープニング基調講演では、エド・トンプソン氏(ガートナー ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリスト)、ジーン・アルバレス氏(ガートナー マネージング バイス プレジデント)、川辺謙介氏(ガートナー シニア ディレクター アナリスト)の3名のアナリストが登壇。企業が優れたカスタマーエクスペリエンス(CX)を提供するための戦略をそれぞれ3つずつ紹介した。
CX成熟度モデルに見る「成功するための指針」
ガートナーは8カ月に及ぶ企業調査を行い、独自のCX成熟度モデルを作った。下図は世界での発表に先駆け、今回のイベントで公開されたものである。
このモデルは「場当たり的」「確立」「実践」「最適化」「組織文化の変革」の順に成熟度が向上することを示しており、2019年における成熟度はB2BとB2Cで若干の差があるものの、ほとんどの組織が「場当たり的」か「確立」の段階にいる。
基調講演で示されたのは、自社がこの成熟度レベルのどこにいるかによって、取り得る戦略の内容は変わるということだ。成熟度が初期段階の「場当たり的」「確立」のときは「実証済みプラクティス」、その段階を卒業して「実践」に向かう場合は「驚くべき成功戦略」、トップ5%の優れたCXを提供する組織になるには「思い切った行動」が求められるということを3人のアナリストは示した。
この9つの戦略がどんなものか、順に見ていこう。
実証済みの「3つのプラクティス」
アルバレス氏によれば、多くの企業を分析した結果、CXで優れている企業はいずれも「調整」「説明責任」「方向性」という3つのプラクティスを継続して行なっていることがわかったという。
調整
CXとはマーケティングや営業、顧客サービスなどの特定部門だけでなく、IT部門を含む全社が一体となって取り組むべき対象である。体制としては、CEOの直属の部下となるリーダーが平均12名の部下を持ち、チームの外にいる86名の関係者とともに日々調整をしながらCXを作り上げる姿をイメージすればよい。
説明責任
組織横断的なチームで仕事を進める際は、責任の所在を明確にすることが重要である。具体的には、取り組みを評価する指標を定め、モニタリングして経過をCEOに説明しなくてはならない。
CXリーダーの使っている主な指標としては「従業員エンゲージメント」「品質」「顧客満足」「ロイヤルティ」「アドボカシー」の5つに分類される評価指標が挙げられる。
方向性
CXの改善を一気に行うことはできない。カスタマージャーニーマップを作り、現状分析を行い、翌年にはどうなっていたいか。またその次の年にはどうなっているべきか。その姿を実現するためにどんなテクノロジーの実装が必要になるのか。最初に向かうべき方向性を定めてから社内に目を向け、段階的かつ継続的に改善していくことが求められる。