近年のテクノロジーの発展は目覚ましく、FinTechやLegalTechなど、テクノロジー(Technology)を合わせた造語である「X-Tech」というキーワードを頻繁に耳にするようになった。FashionTechもそのうちのひとつだ。

今回は、FashionTech領域でビジネスを急成長させている期待のスタートアップ シタテルを紹介したい。同社では、技術の高い縫製工場や衣服の生産インフラを必要とする人々が、いつ・どこであっても自由にオーダーして服を作ることができるような衣服生産プラットフォーム「sitateru」を提供している。

古い商習慣が多く残り、イノベーションが起こりにくい状態にあると言われているアパレル業界に、シタテルはテクノロジーを使ってどう切り込んでいくのか。CTOの和泉信生氏にお話を伺った。

シタテル CTOの和泉 信生氏

オンライン上で、プロのコンシェルジュがワンストップでサポート

シタテルの設立は2014年。同社CEOの河野秀和氏が熊本でビジネス支援などを手掛ける会社を営んでいた際、縫製工場と関わるなかでアパレル業界のいびつな産業構造に課題意識を抱いたことがきっかけだった。

国内の縫製業が縮小していく一方で服を作りたいという人は多く、自分に適した縫製工場を見つけるのが難しいといった声がsitateruのヒントになっている。sitateruは、閑散期の縫製工場のリソースを活用し、小ロットで服を作りたい人とマッチングしてはどうかという河野氏のアイディアからスタートしたのだという。

現在はクライアント会員登録数10000社、プラットフォーム参画企業数700社を超え、順調に成長を続けているシタテル。およそ5000の縫製工場データベースを自社で持っており、そのうち約650の縫製工場と連携している。

また最近では閑散期の縫製工場のリソースを活用するだけでなく、実質的にsitateruの専用工場と呼べるほどの案件を請け負っている縫製工場も出てきているという。中国・ベトナム・韓国といった海外の工場への展開も進んでいるところだ。

sitateruでのやり取りは基本的にすべてオンラインのマイページ上で完結するが、縫製工場は、普段手がけているアイテムによってミシンや加工技術、生産規模などがそれぞれ異なるため、工場と連絡をとるためには専門知識が必要になる。

そのため、初回の打ち合わせから、プロジェクト管理、納品までをプロのコンシェルジュがワンストップでサポートしていることがsitateruの特徴だ。テクノロジーだけで課題を解決しようとするのではなく、人の目を入れることで納品物のクオリティを担保しているというわけだ。

「シャツのみを扱っている工場、サンプルしか取り扱わない工場、コレクションブランドのアイテムを作っている工場、量産をメインで行う工場など、縫製工場にはさまざまなバリエーションがあります。また、生産過程では、ダメージや撥水加工、ボタン付けなど二次加工を専門に行う工場のほか、生地会社、パタンナー、デザイナーなどさまざまなサプライヤーも関わってきます。コンシェルジュはこうした複雑に連携するサプライヤーたちとユーザーを繋ぐ役割を持っています」(和泉氏)