近年、人手不足を背景にRPAへの期待が高まっている。RPAが向いているシーン、向いていないシーンが存在するなか、導入責任者は何を基準に判断するべきだろうか。

今回、リクルートの業務部門と調整しながらRPAの導入を推進してきた リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 データイノベーション推進部 野川 幸毅 シニアマネージャーと赤塚 諭氏にお話を伺った。

リクルートテクノロジーズ ITエンジニアリング本部 データイノベーション推進部 赤塚 諭氏(左)と、同 シニアマネージャー 野川 幸毅氏(右)

利益に貢献するためのデータ分析チーム

――野川さんと赤塚さんの担当業務とご経歴を教えてください。

野川氏 : データイノベーション推進部というデータ活用に向けた組織のマネージャーを務めています。前職ではアナリティクス部隊でクライアントに対するコンサルテーションやデータ分析業務を担当していました。現在もデータ活用技術を使いながらビジネスの意思決定を進化させることをテーマに、さまざまな取り組みを進めています。

データイノベーション推進部は、会社の利益貢献を目指し、RPAやAIを利用した業務自動化、BI、分析プラットフォームの推進、予測システムやシミュレーターなど、データ活用技術による意思決定の進化を牽引することをミッションにしています。各事業のレコメンドシステムや売上予測システムなども開発しています。

赤塚氏 : 私はデータイノベーション推進部のなかでもBIチームと業務支援チームに所属しています。どちらも、社内スタッフの生産性向上に向けた支援を目的に、意思決定の高度化や促進をテーマに活動しています。これまでに10件近くのRPA導入プロジェクトに携わってきました。

――RPAの導入に向けた取り組みはいつごろから始められたのですか。

赤塚氏 : 業務自動化というテーマ自体には相当前から取り組んでいますが、RPAの導入に向けて検討を始めたのは2年半くらい前でしたね。

検討を進めていくなかで、RPAはどうやら使えそうだと見立てられたので、私が1年半前に主担当となって本格的に進めてきた形です。そこからはチームとしてツールを実際に触ってみながら検証して製品を絞っていきました。

野川氏 : 当初はRPAチームはなく、兼務で技術トレンドをみながら、RPAについて比較評価などを行ったり評判を聞いたりしながら、まずは小規模な体制で始めたのが導入のきっかけでした。

RPA適用にはルール化されている業務を探せ

――RPAの特徴はどういうところにありますか。

赤塚氏 : 私たちは業務自動化を支援するツールのひとつとしてRPAを扱っています。RPAの特徴は、ルール化されている業務、特に条件分岐の多い作業を自動化しやすいことだと思っています。

この「ルール化されている」ということがRPAにとっては重要です。週次、月次で行っているようなルールベースのルーチン業務は、RPAが非常にハマりやすいといえます。

――はじめにRPAを導入されたのはどのような業務でしたか?

赤塚氏 : 経理業務です。リクルートはクライアントが多く、お金のやり取りが大量に発生するので、バックオフィス業務が大量にあることは明らかでした。

野川氏 : 経理業務に対してはリクルートとしても投資をして大々的に改善していこうという背景がありました。本来であれば経理システムを刷新するのが一番良いのですが、そのためには莫大なコストがかかってしまいます。

業務量は多いけれど、システムを刷新するコストが大きすぎて刷新は難しいという経理業務が抱える課題に対して、RPAは結果的に非常に適していたことがわかりました。

RPAの分類

――リクルート全社として経理業務を効率化していきたいという背景があったのですね。

野川氏 : もともとは担当者同士で話し合って、経理業務においてRPAを使って小規模の改革を進めていたんです。その取り組みが評判になっていくなか、BPRの領域に大々的に投資をするという社内の流れもあり、本格的に取り組んでいくことになりました。

赤塚氏 : RPAには、大きく分けてサーバ型とクライアント型の2種類があります。サーバ型は、大量のデータやルールを一括で管理できることが特徴です。これに対し、クライアント型は、個人で行っているような特定のPCでの単純作業を自動化するものです。

経理業務の効率化に対しては、スモールスタートするためにクライアント型のRPAの検討から始めました。週に1回程度の作業を「UiPath」というツールでRPAに置き換えて実施していったことが社内で評価され、もっと大規模にやってみようということになったんです。