UiPath社は1月30日、年次カンファレンス「UiPathFoward Japan 2019」を開催した。本稿では「現場を輝かせるEUC開発」と題した講演に登壇したKDDIの近藤裕司氏(技術統括本部 運用本部 運用システム開発部 iProvi開発グループ グループリーダー)の話から、RPA導入アプローチに利用者自身がロボットを開発することを選択した企業の取り組みを紹介する。
RPAに取り組む企業が認識しておくべきコト
KDDIがRPAで業務の自動化を進めたのは、働き方改革の一環である。近藤氏自身はずっとシステム開発に従事しており、改革で利用部門とシステム開発の橋渡しができるツールを探していた。
同社が認識していた課題は、いかにして現場の利用部門が価値を生み出すことに専念できる環境を整備するかであり、「繰り返しの業務が多い」「システムの対応が遅い」「システム操作が複雑」など、利用部門が抱える不満を解決するツールを探していたところ、RPAに出会った。
2017年5月にRPAプラットフォーム「UiPath」を選択し、2017年12月から全社トライアルを開始。2018年4月から本格的な利用に踏み切った。
同社がRPA導入で重視したのは”現場力”を引き出すことである。ロボット開発を外部に委託せず、現場主導で行うEUC(End User Computing)のアプローチをとったのはそのためだ。製品選定でUiPathを選択したのは、「ガバナンス」「拡張性」「セキュリティ」「開発の難易度」の4つを重視した結果だという。
苦心したのは現場が担当する開発の難易度だ。組織が一丸となってエンドユーザーをサポートし、最終的には現場から感謝されたものの、現場が楽しみながら改善を進めるようにするまでには工夫を重ねた。
その経験を踏まえ、これからRPAに取り組もうとする企業に対し、「現場にいきなりツールとサンプルシナリオを渡し、『さあやってみてください』と促すことは得策ではない」と近藤氏は警告する。集合研修を実施したとしても、学んだことは2週間ぐらいで忘れてしまうし、改善のモチベーションを維持することが難しいからだ。
「RPAベンダーはプログラミングレスで業務改善ができると言っていますが、そう簡単にはできません」と近藤氏は断言し、「これからRPAに取り組む企業は、継続的な学習が必要になることを組織として認識する必要があります」と訴えた。
EUCで成功するための柱は「教育」と「推進体制」であり、「この2つは絶対に分離してはいけない」と近藤氏は続ける。比較的教材が揃っているUiPathであっても、実際に業務改善ができるようになるには数週間から3カ月を要するという。
さらに、エンドユーザーが自分の好きなところ、やりやすいところを対象にロボットを作ることがないようガバナンスを強化することが不可欠だ。KDDIでは本部横断型のCoE(Center of Excellence)を作っているが、「体制を作っただけではダメ」だと近藤氏は強調した。