ガートナー ジャパンは11月12日~14日、年次カンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2018」を開催した。本稿では、日立製作所 働き方改革ソリューション推進本部 部長 荒井達郎氏による講演「働き方改革で取り組むべき真の課題」の模様をレポートする。
“人中心”で考える「働く環境の整備」
「働き方改革が目指す姿は大きく3つあると考えています。1つは、働く環境の整備です。自由で働きやすい職場環境をつくることを目指します。2つ目は生産性の向上です。働きやすくした上で生産性を向上するためのチームづくりを進めます。3つ目は、安心して暮らしていける社会づくりです。官民が協力して社会のセーフティネットを作っていくことが望まれます」
荒井氏は冒頭、講演の論点をこのように示し、それぞれにおいて日立がどう取り組んでいるかを解説していった。
まず、1つ目の「働く環境の整備」については、2000年代初頭からこれまでに日立が実践してきた働き方改革の取り組みが紹介された。日立の働き方改革の取り組みは、大きく3つのフェーズに分けられる。
フェーズ1は2000年から2005年頃までに行われた女性活躍支援の取り組みだ。人事部門が主導し、仕事と家庭の両立支援/女性の活躍支援を進め、社内の意識改革を促進する取り組みとして「ジェンダー・フリー&ファミリー・フレンドリープラン」を実施した。
続くフェーズ2では、2006年から2009年頃まで「ダイバーシティ」への取り組みが行われた。フェーズ1の取り組みを拡充すると共に、「ダイバーシティ推進センタ」を設置し、日立グループが連携して長時間残業の縮減などに取り組んだ。またIT部門では、2005年からシンクライアントの本格展開や、フリーアドレス、モビリティ、ペーパーレス化、テレビ会議の全社導入などを推進したという。
フェーズ3は、経営戦略としてのダイバーシティ推進だ。新たに「タイム&ロケーション フリーワーク」として、オフィス環境の改善やサテライトオフィスの積極的な利用、リモートワークを推進。IT部門としても、人の働き方にフォーカスしたワークスタイル変革をグローバルレベルで進めてきたという。
「これまでのようなオフィスを前提とした働き方ではなく、『人』を中心とした作業の場所に着目し、いつでも/どこでも普段の仕事ができる柔軟な働き方を目指すように施策全体をシフトさせてきました」(荒井氏)
荒井氏によると、働く場所をフレキシブルにするには、セキュリティを担保した個人の作業とチームコミュニケーションの”いつでもどこでも化”がポイントになるという。具体的なツールとしては、仮想デスクトップを11万人規模で利用したり、Skype For Businessを13万人で利用したりしている。また、場所と時間に縛られない、新しい働き方に対する作業/労務/IT機器をマネジメントする仕組みも整備した。
荒井氏は、「働く環境を整備する」という観点で重要なことを次のようにまとめた。
「まずは、企業として”ありたい姿”を設計すること。次に、勤務制度や勤怠管理のルールづくり、ペーパーレス化などの制度改革を進めること。その上で、コミュニケーションツールやクライアント環境の整備などIT面でのインフラの整備を進めることです」