アイ・ティ・アールは10月4日、自社イベント「IT Trend 2018」を都内で開催した。本稿では、同社取締役 リサーチ統括ディレクター プリンシパル・アナリストの金谷敏尊氏による講演「スマートテクノロジ革新へ向けて」の内容をダイジェストでお届けする。

スマートテクノロジー市場の「今」

IoT、AI、ロボティクス、AR/VRといった分野が活況だ。これらのいわゆる「スマートテクノロジー」を活用したビジネスは、従来型のビジネスモデルや市場構図を一新する可能性を秘めている。その反面、「市場は未成熟であり、イノベーション推進の壁も厚い」と金谷氏は指摘する。これは、日本で成長が著しいIoT市場でさえも例外ではないという。では、企業は、スマートテクノロジーにどう対峙し、イノベーションを進めていけばよいのだろうか。

金谷氏は、「スマートテクノロジーがもたらすビジネス機会」「イノベーションを取り巻く環境」「戦略的な推進アプローチ」という3つの論点からその問いに対する答えを解き明かしていった。

ITR 取締役 リサーチ統括ディレクター プリンシパル・アナリスト 金谷敏尊氏

まず、スマートテクノロジーがもたらすビジネス機会については、現在、さまざまな”スマートビジネス”が勃興していることをITRの調査結果などを示しながら解説した。スマートビジネスとしては、スマートシティやコネクテッドカー、スマートトランスポテーション、スマートロジスティクスといった社会インフラに関連するものが注目を集めている。

それらが進展することで、スマートファクトリーやスマートエナジー、スマートホーム、スマートコンストラクション、スマートガバメントといった製造や情報通信などの取り組みが活発化。さらに近年は、スマート農業や、スマートリテール、スマートプロダクト、スマートヘルスケア、スマート教育、スマート決済、スマート保険といったように、あらゆる産業へと波及している。

ITRが実施した「IT投資動向調査2019」によると「IoTのビジネス活用」実施率は、情報通信、製造だけでなく、建設/不動産、卸売/小売、金融/保険、サービス、公共がいずれも4~6割に達するなど、いずれの業種でも著しい増加が見込まれている状況だ。

「スマートテクノロジー関連市場はすでに一定の市場規模を形成していますが、今なお成長の初期段階にあり、関連技術の多くは発展途上にあります。現在は、アーリーアダプターが市場を定義/予測しながら、競争が激化している状況です。アーリーマジョリティからレイトマジョリティが移っていくのはこれからです」(金谷氏)

スマートテクノロジーの市場成熟度

こうしたなか、企業が初めから完成度の高い戦略や計画を立案することは困難だ。そのため「動的かつ選択的なビジネス開発、すなわち『スモールスタート』を行うことが1つのポイント」だと金谷氏は説く。また、企業は利用者にも供給者にもなり得るため、自社が特定市場のサプライチェーンのどこに位置するかを見据えた検討が必要になる。そこでもう1つのポイントになるのが「自社ポジションの認識と協創の推進」(金谷氏)となる。