NTTコミュニケーションズは10月4日、5日の2日間、都内にて年次カンファレンス「NTT Communications Forum 2018 Transform. Transcend.」を開催した。本稿では、同カンファレンスにてNTTコミュニケーションズ 技術開発部の伊藤浩二氏が登壇した講演「第4次産業革命に向けて、AIを用いたモノづくり改革への挑戦 ~ディープラーニングを用いたIoTデータ分析事例の紹介と今後の展開~」の模様をレポートしよう。

海外で加速する第4次産業革命の”波”

「IoT+AI=デジタルツイン」が、自律的な最適化をもたらすとされる第4次産業革命。これに対して伊藤氏は、製造業が直面する課題として、「優秀な人材が日本の競争力の源泉と言えますが、一方で品質向上やコスト削減の圧力、さらには少子高齢化と職場離れの加速、といった課題が浮き彫りになっています」と説明する。

NTTコミュニケーションズ 技術開発部の伊藤浩二氏

まず伊藤氏は、現在世界中の製造業で注目されるAI/ビッグデータの活用事例を紹介した。

独シーメンスでは、IBMのAI「Watson」を組み込んだクラウドベースの産業用IoT基盤「Mind Sphere」を推進しており、プラントや工場の工作機械などから情報を収集/分析し、機械の故障予測や生産の最適化を図っている。また、米GEの「Brilliant Factory」は、最新のデジタルテクノロジーにより、リアルタイムでデータを活用。製造オペレーションからサプライチェーンまで、全体の最適化が行われているという。

他方、中国政府では「中国製造2025」として、工場運営のビッグデータをリアルタイムに処理。生産工程を最適化する「スマート製造」の実現に向けた体制整備を急いでいる。そのほか、トヨタはシリコンバレーに子会社・拠点を設立し、「AIを用いた素材開発」を実施。AI活用により、新たな電池材料や燃料電池用触媒などの材料開発を推進している。

伊藤氏は、製造業にAIを適用する際に考えるべき要素として、「AIで解くべき課題を明確化すること」「必要なデータを特定し、収集/蓄積/解析を行う基となるIoTデータ」「課題解決に適したAIを選定すること」の3つを挙げた。

「製造業にAIを適用する際は、解くべき課題、収集可能なIoTデータに合わせて、適切にAIを選定/開発する必要があるのです」(伊藤氏)

それでは、収集可能なIoTデータにはどのようなものがあるのか。実は、製造業で生まれるIoTデータは3つの特徴を有しているそうだ。まず、生産ノウハウを含むデータである場合が多いため、当然ながら「機密性」が含まれている。また、時間変化するデータに隠された意味を探す「時系列性」、そして複数種類のデータを組み合わせて意味を見つける「マルチモーダル性」もポイントとなる。つまり製造業においては、これらに対応するデータ管理手法とAIアルゴリズムが必要不可欠なのだ。

AIアルゴリズムの決定方法については、ビジネス課題と、IoTデータの中身を踏まえ、これらに適したものを開発する必要がある。当然、データの質や量にも留意することが求められるだろう。

AIアルゴリズムの決定方法