ServiceNowは10月17日、ザ・プリンス パークタワー東京にてユーザーイベント「Now Forum Tokyo」を開催した。本稿では、ヤフー 情報システム本部情報システム3部部長 高野蓉功氏によるセッション「デジタル時代におけるヤフー社内ITモダン化を加速させるNow Platform」の様子をお届けする。

ヤフー 情報システム本部情報システム3部部長 高野 蓉功氏

レガシーアプリをスピーディーにモダン化するには

もともと内製の文化が強かったというヤフーの情報システム部門。しかしここ数年は、外部の製品も取り入れつつ、内製のシステムとうまく使い分けながら社内ITのモダン化を進めているという。

下図の黄色い矢印の部分が、社内ITのモダン化に向けてヤフーの情シス部門が取り組んできた施策の一例となる。高野氏は「数年前はレガシーアプリが多かったが、これらの施策を行ってきたことで従業員体験の向上を実現し、従業員がサービス開発に集中できる環境が整いつつある」と語る。

黄色い矢印の部分が社内ITのモダン化に向けた施策の一例

しかしながら、導線が悪かったり入力画面がわかりづらかったりするような従業員の生産性を下げるレガシーアプリはいまだに残存しており、同社の情報システム部門は、こうしたアプリのスピーディーなモダン化を目指し、取り組みを進めている。

こうした中で選ばれたのが、業務オペレーション効率化に向けたアプリ開発のためのアプリケーションPaaS(aPaaS)「ServiceNow Now Platform(Now Platform)」だ。Now Platformの選定理由について高野氏は「必要な機能が揃っており、ローコードでさまざまなアプリが開発できるため、残存するレガシーアプリをスピーディーにモダン化できると考えた。またNow PlatformのITサービスマネジメント(ITSM)の考え方をベースに議論できるのもポイントだった」と説明している。

実行計画の策定で意見が対立

しかし2018年4月にNow Platformを導入した際には「プロジェクト内で揉めていた」(高野氏)という。これはNow Platformに対する期待が関係者の中で異なっていたためだと高野氏は分析している。

「レガシーアプリを担当している現場は少しでも早くリプレイスしたいと思っているので、さまざまな機能を載せたいという期待が高かった。これに対し、何でもかんでも載せてしまうとまたレガシーな状態になるだけなので、きちんと考えたいという人たちと意見が衝突してしまった。こうした議論のためプロジェクト開始当初は想定通りに進まなかった」(高野氏)

そこで高野氏らはラズベガスで行われたユーザーイベント「Knowledge18 Conference」に参加し、Now Platform導入の成功事例調査を実施した。この調査でわかったことは、やはりITSM領域における成功事例が多いということ。

そこで、まずはITSMの中でもインシデント管理、問題管理、ナレッジ管理に関連する領域から着手し、その次に構成管理、リクエスト管理が関わる領域、それ以外のものは次のフェーズに回すという方針で進めていく判断に至った。

その後、すでにモダン化されたものまで含めて社内アプリをITSMの領域ごとに仕分けていったという。高野氏は「これにより関係者内でどの領域から着手すべきかという認識が揃い、社内の既存アプリと競合しているかどうかまで確認することができた」と振り返る。

社内アプリの仕分け方。すでにモダン化されたものまで含めて実施したという

PlatformチームとDevチームに分けることで開発効率を向上

大規模な組織において複数のチームが並行してさまざまなアプリを開発しているような状況では、それぞれが好きなタイミングで好きなアプリを作れることが理想だ。しかし並列して開発することで、アプリ間の干渉が起きてしまう可能性もある。そこでヤフーの情報システム部門では、アプリごとにスコープを切って開発するという方針をとった。

「グローバル領域を直接カスタマイズしたアプリを開発していくこともできるが、スコープを切って開発することでアプリ間の影響をコントロールできるるうえ、ServiceNowのバージョンアップを迅速に行えると考えた。また運用もアプリごとに管理者権限を設定することができるようになるため、業務ごとに権限を設定したいという要望に応えることができる」(高野氏)

アプリごとにスコープを切って開発する方針を採用

開発チームをPlatformチームとDevチームとに分けることで、Devチームがアプリ開発に集中できるような開発体制をとったこともポイントだ。

Devチームは、Platformチームが用意したアプリの雛形に沿って開発を進めていく。高野氏によると、この雛形にはアプリ開発に必要なテーブルの情報やサーバー通信のロジック、UIなどがあらかじめ用意されている。これにより開発の標準化が行われ、アプリの品質や開発効率の向上が見込める。

PlatformチームとDevチームの作業の切り分けなどには苦労したというが、高野氏は「比較的大規模な組織でも効率的にアプリ開発運用する仕組みを作ることができた」と評価している。

PlatformチームとDevチームとに分けて開発を進めた