WSLを利用することでWindows 10でLinuxを実行できるようになった。「VcXsrv」のようなXサーバをWindows 10にインストールすれば、Windows 10でLinuxのデスクトップ環境を利用することもできる。ただし、すでにWindows 10というデスクトップ環境が存在するところにLinuxのデスクトップ環境を用意するというのは、ちょっとばかり重複するので無駄が大きい。
デスクトップ向けのLinuxディストリビューションでは「GNOME」または「KDE」といったフルスペックの統合デスクトップ環境が主流だ。しかし、WSLで利用するには少々重すぎるというか、無駄すぎる。そこで前回までは「XFce4」と「LXDE」という軽量のデスクトップ環境を紹介した。今回はXFce4やLXDEよりもさらに軽量な「Window Maker」を紹介する。
Windows Makerは、いわゆる統合デスクトップ環境というよりも「ウインドウマネージャ」というソフトウエアに分類される。ウインドウのルック&フィールや基本的な取り回しを提供しており、関連するもろもろのソフトウエアまでには手を出していない。ウインドウマネージャには数十種類が存在するが、Window Makerはそのなかでも完成度が高く、「ドックアプリ」と呼ばれる小さなツールアプリやユーティリティアプリが充実しているという特徴がある。WSLで自分でカスタマイズした軽量なLinuxデスクトップを構築するならWindow Makerは有力な候補の1つだ。
Window Makerインストール
Window Makerに加え、最も基本的なソフトウエアとしてターミナルアプリケーションとWebブラウザ、それに日本語フォントをインストールするとすれば、次の4つのパッケージをインストールすることになる。
パッケージ | コマンド | 内容 |
---|---|---|
wmaker | wmaker | ウィンドウマネージャWindow Maker |
fonts-noto | Notoフォント | |
chromium-browser | chromium-browser | Chromium Webブラウザ |
lxterminal | lxterminal | LXDEターミナルアプリケーション |
■上記パッケージをインストールするコマンド
sudo apt install wmaker
sudo apt install fonts-noto
sudo apt install chromium-browser
sudo apt install lxterminal
まず、XサーバのVcXsrvを起動しておく。どのモードでもよいのだが、Window Makerを機能させるにはフルスクリーンモード、ワンラージウインドウ、タイトルバー付きワンウインドウのどれかを選択して起動しておく。
インストールしたWindow Makerは、次のコマンドで起動することができる。
export DISPLAY=localhost:0.0
wmaker
起動してくるWindows Makerは、次のようにシンプルなものだ。
左上と右上に四角いアイコンのようなものを見ることができると思うが、これがWindow Makerの特徴的なUI/UXだ。Window Makerではこの四角いサイズのアプリを「ドック」と呼んでおり、いくつもドックアプリが存在している。ドックアプリやユーティリティ系のアプリが多く、デスクトップ環境をより便利なものにしてくれる。
Window Makerカスタマイズとドックアプリインストール
Window Makerは最も右上にあるWMDockをダブルクリックすることで設定パネルを起動することができるのだが、パスが異なっており、ダブルクリックしても何も起動してこないかもしれない。その場合、WMDockの上で右クリックしてメニューからSettings…を選択し、次のダイアログを起動させてほしい。
Application path and argumentsが/usr/bin/WPrefsになっていない場合、次のようにパスを書き換えてOKボタンをクリックする。
この状態でWMDockをダブルクリックすれば次のようにWindow Makerの設定パネルが起動してくる。
Windows Makerの設定はこのWPrefsを使うことで編集できる。いろいろな変更が可能なので、ひととおりいじってみるといいんじゃないかと思う。
Window Makerで利用できるドックアプリの情報はdockapps.netにまとまっている。どのようなドックアプリが存在しているのか、軽く探ってみるといいだろう。
よく使われていそうなドックアプリを次の表にまとめておく。気に入るドックアプリを見つけることができると思う。
パッケージ | コマンド | 内容 |
---|---|---|
asmon | asmon | システムモニタドックアプリ |
wmsysmon | wmsysmon | システムモニタドックアプリ |
wmforkplop | wmforkplop | TOPコマンドドックアプリ |
wmtop | wmtop | TOPコマンドドックアプリ |
wmcpuload | wmcpuload | CPU負荷モニタドックアプリ |
wmload | wmload | CPU負荷モニタドックアプリ |
wmcube | wmcube | CPU負荷モニタドックアプリ |
wmfsm | wmfsm | ファイルシステムモニタドックアプリ |
wmcalc | wmcalc | 計算機ドックアプリ |
wmtime | wmtime | 日付時計ドックアプリ |
wmitime | wmitime | 日付時計ドックアプリ |
wmclock | wmclock | 日付時計ドックアプリ |
wmclockmon | wmclockmon | 日付時計ドックアプリ |
wmcalclock | wmcalclock | 日付時計ドックアプリ |
wmfsm | wmfsm | ファイルシステムモニタドックアプリ |
wmifs | wmifs | ネットワークトラフィックモニタドックアプリ |
wmnd | wmnd | ネットワークインターフェースモニタドックアプリ |
wmnet | wmnet | ネットワークモニタリングドックアプリ |
wmmemload | wmmemload | メモリ/スワップモニタドックアプリ |
wmsun | wmsun | 日の出日の入りドックアプリ |
wmwork | wmork | 作業時間計測ドックアプリ |
wmweather | wmweather | 天気予報ドックアプリ |
wmbiff | wmbiff | メール通知ドックアプリ |
カスタマイズしたWindow MakerとインストールしたターミナルアプリケーションやWebブラウザ、Window Makerドックアプリを動作させると次のようになる。
Window Makerはそれ単体では依存関係が少なく軽量に利用することができる。ドックアプリも便利だ。WSLのような環境でLinuxをデスクトップ的に利用するならWindow Makerは1つの選択肢になってくれるはずだ。最近のデスクトップ向けLinuxディストリビューションはよくできており、個人がウインドウマネージャから個別にソフトウエアをインストールしてデスクトップ環境を構築することはほとんどないと思う。WSLではある意味それがやりやすい環境とも言える。このタイミングで試してほしいところだ。Linuxはこうした構築やカスタマイズが行いやすいところにも魅力がある。