ビジネスを運営する上で必ず発生する業務の1つが経理処理だが、その効率化においては、情報やノウハウの不足が障壁となっている。他社の運用状況はもちろん、昨今話題のRPAなどについても「気にはなるが、詳細は知らない」という担当者は多いだろう。
そうした不安や疑問を払拭し、経理のノウハウが共有されることを目指し、マネーフォワードは9月7日、法人企業の管理部門や経理部門、経営層などを対象に、経費精算をテーマにしたイベント「MF Expense expo 2018」を初開催した。
本稿では、その基調講演「RPA・AIが管理部門へもたらす未来 ~中小・中堅企業はどんな備えをすべきか~」で実施された、RPAホールディングス 代表取締役 高橋 知道氏とマネーフォワード 取締役 兼 Fintech 研究所長 瀧 俊雄氏によるトークセッションの模様をダイジェストでお届けする。
日本で加熱するRPAブーム
「RPAが加熱していますが、どう思っていますか?」――セッション冒頭、瀧氏は高橋氏にこう問いかけた。RPAという言葉自体が浸透したのはここ1年ほど、メディアで取り上げられるシーンも増え、コンサルティング会社やシステム開発会社、ロボット関連業者などがこぞって参入している。
高橋氏はこの問いに対し、「素晴らしい状況」だとコメント。「RPAと言うと特定のシステムやロボットを作るツールを想像する人が多いのですが、もともと単なる概念です。最大の特徴は変化に強いこと。システムは人間の作業を代行してくれるものですが、システム化する際にはかなりの開発が伴います。ロボットは、変化に強いことが最大の特徴です」と説明する。
そんなRPAが生かされやすい場所はどこなのだろうか。
「ロボットなので、ルールベースなんですね。今はまだ単純作業で、ルールベースをコーディングして再現するというかたちです。最初は金融機関や大量の事務処理をするようなセンターから導入が始まって、経理などももちろん大半がルールベースの作業ということで、その辺りとは相性良く始まりました。ただ、今、ルーチンワークの作業って紙でやっているんですね。それから営業やマーケティング部門などでもルーチンワークはたくさんあるので、その辺りでも活用が進んでいっています」(高橋氏)
では、海外と日本でRPAの活用シーンに違いはあるのだろうか。RPA自体は既存の業務システムの操作を自動化するソフトウエアなので、労働環境が異なれば活用される場も異なることになる。
高橋氏は、「米国はオペレーションのかなりの部分がBPO業者にアウトソーシングされています。そのため、米国でRPAと言うとメインはBPOのなかの話です。けれども、日本では現場にたくさんオペレーションが残っています。現場で創意工夫するガバナンスも残っているので、そこは違うかなと思います。中国はレガシーシステム自体がなくてAPIを叩くので、RPAの(活用される)余地があまりない状態です」と説明する。
これに瀧氏も「10あるうち3だけやって7はインドに丸投げして早く帰ろう、という目的がはっきりしている米国と違って、日本人の働き方は真面目できっちり10やろうとする人が多いんですね。多分RPAは、その7のプロセスの”夢”をふくらませるところなんだろうなと思います」と応じる。その真面目さがゆえに、今、日本でRPAが盛り上がっているのではないかと言うわけだ。
高橋氏は「そういう面もある」とした上で、「米国は末端の(オペレーションの)質のばらつきがあったり、コントロールが難しかったりするので、システム化やBPOなどが発達していますが、日本はその逆であるという言い方ができると思います」とまとめた。