インフォマティカ・ジャパンは8月29日、年次イベント「Informatica World Tour 2018」を東京コンファレンスセンター・品川にて開催した。「Disrupt. Intelligently. 破壊しよう、インテリジェントに。」をテーマに掲げた同イベントでは、企業のデジタルトランスフォーメーションを牽引する最先端のデータマネジメント製品/サービスの展示と共に、有識者らによるさまざまな講演が繰り広げられた。

本稿では、日本たばこ産業によるユーザー基調講演「経営目標実現のために”データ”ができること。そのためにITがすべきこと」の様子をレポートしよう。

課題は「各業務システムの個別接続」

登壇した日本たばこ産業 IT部 次長の村木光昭氏は、「JTグループを取り巻く事業環境の急速な変化、デジタル技術の進化に伴う産業の境界を超えた新たな競争、お客様行動の変化などにより、近年では先を見通すことが困難な時代が到来しています」と切り出した。

日本たばこ産業 IT部 次長の村木光昭氏

「こうした状況を打開するべく、弊社では火を使わず煙の出ない新しいスタイルの電子たばこ製品や、変革をリードする組織への進化に取り組んできました」(村木氏)

その取り組みの一環として、同社ではデータ利活用の拡大を図るべく、データ利用に関するアプローチ方法の改革を実施した。つまり、最初にゴール/要件を定義し、完成までに期間を要するウォーターフォール型のアプローチから、不確定を前提として気軽にトライでき、データリソースの自由度が高く容易に接続できるデータ連携基盤へと移行を図ったのである。

データ連携基盤によりデータの一元管理を実現

続いて登壇した日本たばこ産業 IT部 主任の北村一平氏は、「従来の環境では、データの源泉である各業務システムがユーザーと個別に接続している状態のため、柔軟性の欠如に加えて、高コストかつ維持に手間がかかり、チャレンジと失敗を許容しにくい、といった課題がありました」と説明する。

日本たばこ産業 IT部 主任の北村一平氏

また、BCM(事業継続マネジメント)の複雑性が増大してしまうのもネックとなっていたのだという。

データ連携基盤導入前のシステム環境

データ連携においてポイントとなる機能としては、「送受信ログの確認」「配送先管理」「送受信制御」「再配信機能」「形式変換」「外部連携」の6つが挙げられる。これらを実現するため、日本たばこ産業ではインフォマティカが提供するメタデータ主導型のデータ統合プラットフォーム「Informatica PowerCenter」と、データ統合ハブソリューション「Informatica Data Integration Hub」を導入し、各種業務システムと連携。実データはSaaSのパブリックサービスと、メタデータは「Informatica Cloud」と連携させた。

これにより、社内外のデータルートを集約管理できるほか、データ流通履歴の保持、流通するデータの一時保持、データ流通の仕組み標準化が可能になり、トレーサビリティの確保とデータ流通の管理力強化が実現された。また、社内の分析用データおよび社外サービスからのデータを蓄積する、データ活用に向けた仕組みも整えた。

さらに、MDMとして「Informatica Data Management」を採用し、統一マスタ管理および個別マスタコード値変換を行うことで、データ同士をつなぐ仕組みを強化している。

データ連携基盤のアーキテクチャとポイント

こうした取り組みの結果、「データ状態/データソース/データ流通」の管理が行えるようになり、「事業継続性の強化」「データ管理のガバナンスレベル向上」「事業環境変化スピードへの対応力強化」「外部サービスの活用に向けた環境整備」「個別開発の抑制による低コストかつハイスピードで手間を削減したデータ連携」などが可能になったのだという。

北村氏は、「データ連携基盤の導入について、現在は第1ステップを終えた段階です」と説明する。

同氏は「今後は第2ステップとして、データの所在に左右されない利便性と、データ管理に関して人的依存からの脱却を図れるよう、データの垣根をなくす取り組みを実施します。また、あらゆるシステムやサービスと短期間で、シンプルかつ低コストでデータ接続可能なフレームの整備も行っていく予定です」と展望を語り、講演を締めくくった。