「デジタルデクステリティ(Digital Dexterity)」とは、デジタルテクノロジーを熟知して自由に使いこなすことのできる能力や、意欲を指す。本稿では、8月31日に開催された「ガートナー ITソーシング、プロキュアメント&アセット・マネジメント サミット 2018」におけるガートナー ジャパン バイス プレジデント 志賀嘉津士氏の講演「『デジタル・デクステリティ』早分かり」の模様をお届けしたい。

なぜ今、デジタルデクステリティなのか?

志賀氏は講演冒頭、「デジタルテクノロジーを使いこなすことは、目に見えないパワードスーツを身にまとうようなものです」と切り出した。

近年、個人やチームの生産性を飛躍的に向上させる新しいテクノロジーが多数登場している。これらのテクノロジーを使いこなすことができれば飛躍的なパフォーマンスの向上が期待できるだろう。ただし、それには使う人の「意欲」と使いこなすための「仕組み」が求められると志賀氏は説明する。

ガートナー ジャパン バイス プレジデント 志賀嘉津士氏

今、デジタルデクステリティが注目されている背景として、志賀氏が挙げたのは次の3つだ。

■デジタルに接する時間の増加
生活者がデジタルに接する時間が増えている。「メールやスケジュールの確認」「ビデオ会議への参加」「資料作成」「経路検索」などのほか、就寝中でさえもウェアラブル端末を使う人がいる。
■クラウドサービスの普及
オンプレミスからクラウド時代に移り、IT調達の方法が変化した。IT部門は今までよりもユーザー支援にリソースを集中させることができる時代になっている。
■技術系と人間系のギャップ
一般的な人間のスキル向上は時間の経過に比例するが、技術の発展は幾何級数的なものである。過去を振り返ると、WindowsやMacでUIが大きく変わり、テクノロジーと人間の距離は縮まったかに見えたが、最新テクノロジーは人間の”頑張り”を求めるようなものに変化している。

ITを意のままに使いこなせる人は、組織のなかで高いパフォーマンスを上げることができる貴重な存在だ。そんな人たちはお仕着せのITでは満足できない。だとすると、今までのようにユーザーに「これを使ってください」と指示することはできなくなる。志賀氏は当日の基調講演で語られた言葉「ITの知識を持つ人が多い企業はイノベーションを得意としている」を引用し、デジタルデクステリティ強化の重要性を訴えた。