テクノロジーの進化によって仕事の在り方が大きく変化するなか、企業が投資すべき”人財”育成の在り方などを探るイベント「CONVERGE TOKYO 2018」(主催:コーナーストーンオンデマンドジャパン)が、7月12日、都内で開催された。

「未来の仕事のあり方-AIやデジタル社会で求められる能力・人財教育とは?」をテーマに掲げた同イベントの事例セッションの1つに、アルバック 人財センター 副参事、廣瀬知子氏が登壇。「アルバックの自ら学ぶ風土づくりの取り組み」と題し、同社グループがLMS(Learning Management System:学習管理システム)を導入した経緯や、グループ各社への展開状況などについて紹介した。

若手不足の日本、ベテラン不足の海外

1952年に日本真空技術として創業したアルバック(2001年に現社名に変更)は、真空ポンプをはじめとする各種真空装置を製造する”真空技術のトータルメーカー”だ。世界的なニーズの高まりから海外での売上比率が伸び続けており、現在の売上は日本と海外でほぼ半々。その海外拠点はアジアに集中しており、なかでも中国が多いという。

このようにグローバル展開している同社では、人材の育成/教育に関して国内外でそれぞれの課題を抱えていた。国内では社員の高齢化が進み、ベテラン社員が定年を迎えるため若手の育成が急務となっていたのに対し、海外では、若手社員ばかりでリーダーが少ないことが問題視されていたのだ。急速に増え続ける海外現地法人からの指導要請に応じきれず、専門教育がグループ内で体系化されていなかったこともあり、人材育成がグループ全体(国内16社、海外34社)での緊急課題となっていったのである。

人材育成と、そのための教育の仕組みを実行する体制が必要だと判断したアルバックでは、2015年度に生産本部内に生産本部教育センターを設立する。ここでは、eラーニングがフルに活用されることとなった。

廣瀬氏は当時を振り返り、「eラーニングを使った人材教育などそれまで経験はなく、まさにゼロからのスタートでした」と語る。

アルバック 人財センター 副参事 廣瀬知子氏

そして2016年度には「ULVAC Academy」へと発展し、そのなかで使われるツールとしてLMS「ULVAC Academy Portal」が本格的にスタートした。ULVAC Academy Portalのコンセプトは、「アルバックの生産に必要な教育資料を学ぶべき人に提供し、本社としてグループ全体で学ぶことができる環境を提供する」というもの。このコンセプトに基づき、次のような要件を満たすことが目標として掲げられている。

  • 社員の技術能力の底上げと個々の能力を発揮する仕組みをつくる
  • 個人/部門/グループ各社に散在する教育資料を集約/体系化/提供する仕組みをつくる
  • 履修(進捗/理解度)管理、資格管理
  • 継続実施
  • グループ展開
  • セキュリティを確保しながら出張先など社外でも学習できる環境をつくる

「個人的な目標として『ちょっと見ようかな』と気軽にアクセスしてもらえるようなポータルにすることを目指している」(廣瀬氏)

ULVAC Academy Portalは、新入社員などが講師からリモートで基礎知識の講義を受けて自習するケースのほか、実際に集まってディスカッションする前の予習、リモートによる自習と現場での実習をセットにした使い方など、さまざまな形態で活用されている。

「古い資料をデジタル化して海外からでも見られるようにするなど、図書館的な機能も持たせました。今後はSNSなどを活用したコミュニティづくりにも取り組んでいきたいと思っています。勉強した後、現場で感じた疑問などをポータルで問い合わせることができるようにと現在取り組んでいるところです。そうした問い合わせ履歴は、自社のノウハウとなって、やがて教材に展開するといったことができる可能性もあるのではと考えています」(廣瀬氏)