今から数十年後の社会がどうなっていて、どんな仕事があるのかは誰も予測できない。だが、いかに世の中が変化しようと、自社の製品/サービスを他社のそれとは差別化したいという想いは変わらないだろう。そこでカギを握るのは、企業を構成する「人」の存在だ。
コーナーストーンオンデマンドジャパンは7月12日、都内にて年次カンファレンス「CONVERGE TOKYO 2018」を開催した。
「未来の仕事のあり方 - AIやデジタル社会で求められる能力・人財教育とは?」をテーマに掲げた同イベントでは、テクノロジーの進化によって目覚ましい勢いで変化する社会やビジネスと、それに対応するために必要な人材の在り方に着目。現状の分析から将来に向けたビジネス課題、現在進行系で人材マネジメントに取り組む企業の事例など、有識者らによるさまざまな講演が繰り広げられた。
それらのなかから本稿では、米CornerstoneOn DemandでCTOを務めるマーク・ゴールディン氏による基調講演の模様をレポートする。
変化が加速する社会
「世界の変化は加速しています。今始まろうとしているのはAI、ロボティクスの時代です」
冒頭、こう切り出したゴールディン氏は、テクノロジーの進化によるさまざまな変化に「企業は追いつけていない」「最も遅れているのは公共政策だ」と警鐘を鳴らす。
同氏が示した統計データによると、CEOの90%はデジタル技術によって自分の業界が破壊的変革にさらされると考えているものの、それに十分なスキルの対応ができているとするCEOは30%しかいないという。つまり、問題を認識してはいるものの、どうしたらよいのかわからないのが現状というわけだ。そうした変革は、いずれの業界でも起きている。
例えば、小売業で言えば、Amazonの台頭によって書店の売上は大きな影響を受けた。ゴールディン氏曰く「ロサンゼルスで書店を探すのは至難の技」だ。また、かつては先進的な技術を活用した物流システムで世界最大の売上を誇ったウォルマートも、「以前は米国のどこに行っても店舗があったが、今はほとんどない」(ゴールディン氏)という。
娯楽的なコンテンツはオンラインでの視聴が当たり前になり、医療に関してはAIで優れた画像診断が可能になりつつある。このようにどの業界も変革にさらされている今、市場における競争力を維持することが企業にとって大きな課題となっているのだ。
こうした状況を踏まえた上で、ゴールディン氏は企業に所属する「人」に話を移す。米国では、スキルのある労働者は不足している反面、スキルのない求職者は職に就けず、深刻な社会問題になっている。これがスキルの有無が生む格差「スキルデバイド」だ。
「マッキンゼーの調査によると、日本では、2030年までに業務の26%、世界的には15%が自動化されると言われています。つまり、仕事が変わるのです。なくなるものもあるかもしれません」