デスクトップからモバイルデバイスへデータ移行
これまで取り上げてきたフルスタックのパスワード管理アプリと比べたEnpass password managerの最大の特徴は、利用するにあたってクラウドアカウントの作成が不要という点にある。後から既存のクラウドアカウントを使ってデータの同期を実施することもできるが、クラウドアカウントを登録しなくても利用できる点がこれまでのサービスと大きく異なっている。
そしてEnpass password managerでは、クラウドアカウントを使わなくてもアカウントデータを共有する方法が提供されている。アカウントデータの管理を行うためにアカウントデータをクラウド側に送信することに不安を感じるユーザも多いだろう。Enpass password managerを利用することでそうした不安を払拭した状態でアカウントデータ管理を行うことができる。
Enpass password managerアプリのセットアップ
Enapss password managerはアプリストアに登録されているので、そこからインストールすればよい。
Enpass password managerではバックアップデータを復元するという形でデータの同期を実施することができる。ここではすでにデスクトップ版のアプリケーションを使った後なので、「私の既存のデータを復元する」を選択してデスクトップ版で登録したデータをコピーする。
データをコピーする方法が表示されるので、この中から「WiFi」を選択する。
「WiFi」を選択すると、デスクトップ側からアクセスするURLが表示される。
表示されたURLにアクセスすると、次のようなページが表示される。ページにはバックアップファイルをアップロードするようにとメッセージが記載されている。
Enpass password managerのメニューから「ファイル」→「バックアップ」を選択してバックアップデータをファイルに保存する。
Webブラウザから先ほど保存したバックアップファイルを選択してSubmitボタンをクリックする。
残りの作業はモバイルデバイス側で行うようにといったメッセージがWebブラウザに表示される。
Enpass password managerアプリに戻ると、次のようにアップロードされたファイルからデータを復元するか聞かれるので、ここで「復元」をタップする。
Enpass password managerのマスターパスワードの入力を求められるので、マスターパスワードの入力を行う。
これでセットアップはほぼ完了だ。マスターパスワードの代わりにタッチIDを使うようにするなら、ここでタッチIDを有効化してから「Enpassの使用を開始します。」をタップする。
Enpass password managerアプリを利用
Enpass password managerアプリの起動時にはマスターパスワードを入力する。
Enpass password managerアプリの利用方法はほかのパスワード管理アプリとほとんど同じだ。提供されている機能は比較的シンプルな方に分類される。Enpass password managerにブラウザが組み込まれているので、この組み込みブラウザを利用するスタイルになっている。
Enpass password managerアプリはメニューが画面の左側にまとまっている。しばらく操作していれば使い方はだいたい掴めるだろう。
Enpass password managerアプリでは無料で管理できるアカウント数の上限が19個に限定されている。これ以上の数のアカウントを管理したい場合にはプロ版にアップグレードする必要がある。
これまで何度か説明してきたが、この手のアプリを使い続けたいのであれば、購入やサブスクリプションの購入は選択肢のひとつに入れておいた方がよい。サービスを永続的に続けてもらうには開発や運営に資金が必要になる。使い続けたいと考える場合には購入やサブスクリプションの支払はある程度必要なものだと考えておいた方がよいだろう。
クラウドアカウント不要のEnpass password manager
フルスタックのパスワード管理アプリでは提供されている機能やサービス、UI/UXに差はあるものの、もっとも必要とされる機能についてはほとんど差が見られない状態にある。そんな中でEnpass password managerは利用するにあたってクラウドアカウントが必要ないという特徴がある。自分のアカウントデータが自分の認知しない場所にコピーされていることを嫌うのであれば、Enpass password managerは有力な選択肢になってくる。
たしかにクラウドアカウントを利用するとパソコンとスマートフォンの間でアカウントデータを自動的に同期することができてかなり便利だ。さらにタッチID(指紋認証)も有効にすれば、マスターパスワードを入力することなくアプリを利用し続けることができる。便利この上ない。
しかし、便利であることはリスクを生むことも常に考えておいた方がよい。クラウドアカウントを使ってデータコピーを行うということは、データは手元のデバイス以外にもコピーされることを意味しているし、タッチIDを使うようにするとマスターパスワードを忘れるというリスクが高くなる。結局どこに重きをおくかということなのだが、特にクラウドアカウントの作成を好まない方にはEnpass password managerがお薦めだ。