ルールエンジンや機械学習などを用いることで作業の自動化/効率化を図るRPA(Robotic Process Automation)。近年、急速に普及に向けた動きが進み始め、さまざまなソリューションが登場している。

その1つが、NTTデータが提供する「WinActor」だ。

導入企業数は右肩上がりに伸びており、2017年度には新規1,000社に5,000ライセンスを提供するなど勢いを見せている。

一方で「RPAをどうやって働き方改革につなげていけばいいのかわからない」「情シスだけが使っている」といった問い合わせも増加しているのだという。こうした課題が見えてきたのも、RPAの導入が進んできたからこそだ。

多くの企業が手探りでRPAの効果的な活用法を模索している今、他社に一歩先んじる近道は、すでに成果を上げている事例から学ぶことだろう。

7月4日に開催された「RPA DIGITAL WORLD 2018」(主催:RPA BANK)では、実際にWinActorを導入した日清食品ホールディングスと富士運輸から担当者が登壇。RPA導入におけるポイントや、成果につながる運用方法などについて語った。

狙うのは「生産性向上」と「業務の見える化」- 日清食品

「当社がRPAを導入したきっかけは『働き方改革に対する社会的要請』だった」――そう語るのは、日清食品ホールディングス Business Innovation室の相羽毅一郎氏だ。

日清食品ホールディングス Business Innovation室 相羽毅一郎氏

第4次産業革命に乗り遅れまいとする機運が社内で高まり、2017年夏ごろより”地に足の着いた解決方法”としてRPA導入の検討を始めたという。

導入を主導したのが相羽氏の所属するビジネスイノベーション室だ。社内の業務プロセス改善を担う部署であり、同時に縦割りになりがちな組織間の隙間をつなぐ”軟骨的存在”でもある。

「見える化し、考え、動く」をコンセプトに活動する同部署は、これまでに業務の見える化やSAP導入による基幹業務システム刷新を図った「N-ERPプロジェクト」などを推進してきた。

働き方改革にも積極的に取り組んでおり、2015年には各部門の立候補者で構成した委員会を組織。各種研修の充実や女性活躍推進、良い取り組みを表彰するダイバー表彰制度など、組織の風土改革に挑んできた。

そんな取り組みの1つが、「スマートワーク2000」。年間労働時間2,000時間を切ることを推進する運動で、有給消化率向上や残業削減を打ち出している。

労働時間の削減とセットで語られるのが、生産性の向上だ。そのために日清が導入したのがRPAというわけである。

「生産性とは、かけた時間に対してどれだけアウトプットが出せるかということ。RPAは短い時間で同じアウトプットを出せるので生産性は向上します」

RPA導入による狙いはそれだけではない。相羽氏が進めるのは”業務の見える化”だ。

「業務を見える化することで、『本当にこの業務は必要なのか』を考えることができるようになります。そこから業務マニュアルの改善につながると期待しています」

RPA導入による単純なスピードアップに加えて、それによって業務自体の見直しも図るという二段構えこそが、RPA導入の真価というわけだ。

こうしたRPAソリューションは日清においてはまだ発展途上であり、導入については「まずやってみる」という考え方で始めたという相羽氏。今年2月にソリューション選定を行い、5月中旬には全社周知のためのイベント「RPAスタートアップ」を社内で行うなど準備を整えていった。

RPAスタートアップの目的と概要

導入から数カ月。確かな効果を感じながらも、「RPAは”魔法の杖”ではない」と相羽氏は釘を刺す。

「人間がやったほうがいい仕事も多いし、ロボットがやった業務の責任もとる必要があります。自動化を進める上で、必要な下ごしらえもあり、時間はかかります」

とはいえ、成果はしっかりと出ている。財務経理や人事、営業事務などに導入した結果、削減時間は累計882時間に達しており、RPAの可能性を大いに感じているという。「今後はさらに熱量を上げて働き方改革につなげたい」と意欲を見せ、相羽氏は講演を締めくくった。