企業が目標を達成するために、戦略的に人材を育成/管理し、能力を最大限に引き出すタレントマネジメント。その重要性は世界的に認識されつつあり、欧米企業では既にテクノロジーを活用した積極的な取り組みも進んでいるが、日本でそこまで至っている企業はまだ少ない。
だが、「変化の”波”に遅れて乗ることには、メリットもある」と米Cornerstone OnDemandのチラーグ・シャー氏は語る。
タレントマネジメントソリューション「コーナーストーン」を提供するCornerstone OnDemandは、1999年の創業以来、企業における人材の在り方を見つめ続けてきた。現在は、包括的なタレントマネジメントをサポートする各種機能を「リクルーティング(採用)」「ラーニング(学習)」「パフォーマンス(業績管理)」「HR(人的資源管理)」の4つのスイートで展開しており、日本市場にも積極的な投資を行っている。
そんな同社で日本とAPACのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーを務めるシャー氏は、日本企業のCHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)たちと対話するなかで、タレントマネジメントに対する日本企業の「考え方」は決して遅れているわけではないと感じたという。
企業という組織に属する人間が世界で通用するスキルを身に付けるには、何を考え、どのように行動することが必要なのか。そして、そうした優秀な人材を創出し、自社の継続的な成長を実現するために、日本の企業は何をなすべきなのか。
変化のなかで成長し続けるために理解しておくべき現状と課題、対策について、来日中のシャー氏にお話を伺った。
「学習」が企業にもたらすインパクト
――今、日本企業のタレントマネジメントはどのような状況にあるのでしょうか。
タレントマネジメントに関して企業が抱えている課題は、日本もほかの国も同じだと思っています。課題を解決するためのテクノロジーの導入、という面では遅れてはいますが、今後他国に追いつく余地は十分ありますし、人材を最大限に活用するという意味ではむしろ他国を上回っていく可能性もあります。
というのは、私は主要な日本企業のHRのリーダーたちと話をしてきましたが、彼らの課題の捉え方は欧米企業と非常に似ているし、場合によっては優れていることもあり、タレントマネジメントに関して、洗練された考え方をしていると感じました。もし日本企業に課題があるとすれば、理解した課題をいかに正しい技術で実装(解決)していけるかというところだと思います。
――その「課題」というのは、具体的にどういったものですか?
日本でも米国でも、人材が自らのスキルや能力を開発するためにラーニング(学習)を継続することが必要だと考えられています。学び続けることで、自分の仕事は会社に対してインパクトを与えていると感じられるようになり、(所属する企業への)エンゲージメントレベルも高まります。最終的には、企業全体の生産性も上がるでしょう。
学習できる環境を整えることで、人材は自己啓発やスキルアップができるし、結果として企業にも良い影響があるはずです。例えば、今世界で人口がどんどん増えているミレニアル世代にとって魅力的な企業となれるでしょうし、人材の定着も図りやすくなります。なぜなら、ミレニアル世代は効果的な学習を求めていて、常にスキルアップやキャリアアップを目指しているからです。
――エンゲージメントに関わるのであれば、若手だけでなく中堅以上の世代にも学習が必要ですね。
まさに、日本のHRのリーダーが重要視しているのはその辺りではないかと思います。中堅以上の世代のスキルは、何年も前に身に付けたものです。その後、仕事に必要なスキルは変化しているので、過去身に付けたスキルのなかには、今は効果的でないものもあります。
日本の大手企業のCHROの方々は、「年長者に働き続けてもらうにあたって、いかに新たなスキルを身に付けてもらうかが課題」だと言います。新たなスキルを身に付けてもらうことで、エンゲージメントが高まり、企業の生産性向上につながる点は年長者についても同様です。