ハイブリッドクラウド研究会では、クラウド導入事例のユースケースを集めて議論するなかで、「ハイブリッドクラウドガイドラインの策定」を当面の目標に据えて活動しています。今回からは数回にわたって、このガイドラインについて説明していきたいと思います。

「傾向と対策」を示すガイドラインを目指して

ガイドライン策定の目的は、ハイブリッドクラウドによって組織のITシステムをトランスフォーメーションし、新たなビジネス価値を生み出す際の「指標」とするためです。

ガイドライン策定にあたっては、まず現状を理解するため、研究会に参画する企業が実際に対応した過去のユースケースや世界中で公開されている事例などを収集し、「ハイブリッドクラウド導入パターンの洗い出し」を行っています。その上で、実際にクラウドに移行したユーザーが運用しているシステム構成を現時点での「1つのスタイル」だと捉え、「ハイブリッドクラウドスタイル」として定義しようというわけです。

とはいえ、前回も触れたように我々の研究会が定義した「スタイル」と顧客が求める「あるべき姿」は多様化した社会において必ずしも一致するとは限りませんし、テクノロジーの進化や時間の経過と共に変化するものだと思っています。

そうした前提の下、企業には「あるべき姿」の押し付けではなく「傾向と対策」の手段を与えることが重要だと考えています。

大学入試に例えるなら、「赤本(過去問が記載された試験対策本)」の存在に近いかもしれません。さまざまな期待や目的を持った受験生が希望する大学進学を目指すには、その大学の「傾向と対策」をつかむことが受験に合格するための近道だったと思います。大学入試に限らず、さまざまなチャレンジにおいては、傾向を把握し、対策を立てることが重要だというわけです。

赤本が常に改訂されているように、このガイドラインも「策定して終わり」ではなく、皆さんからのフィードバックを受けて継続的に改訂していくことで「鮮度を失わない」ガイドラインにしていきたいと考えています。

RFC(Request for Comments)ではないですが、「Request for Cloud Style」といった形で皆さんのフィードバックが集まれば集まるほど、このガイドラインはより洗練されたものになります。興味を持たれた方は是非、ハイブリッドクラウド研究会にご参加いただければ幸いです。

活動への参加方法

幹事企業となり分科会をリードしたい企業の方は、以下の情報を添えてhccjp★microsoft.com、およびhccjp★jbs.comまでメールでご連絡ください(「★」を「@」に変換してください)。

●部課長クラスの方の担当者名/部署名/連絡先
●この活動をサポートしていただける役員クラスの方の役職・氏名

また、コミュニティに参加を希望する方はConnpass上のハイブリッドクラウド研究会ページよりメンバー登録してください。 本コミュニティの趣旨に賛同される方は、ぜひ参加いただければと思います。

「ハイブリッドクラウドスタイル」の具体例

さて、現在我々がスタイル選定を行う際には、次のような「クラウド導入時に必要となる観点」をポイントにして定義付けをしています。

クラウド導入時に必要となる観点

上記を大きな柱として、補足的に以下のような考慮ポイントを含めて検討を続けています。

  • セキュリティ要件
  • データ容量
  • 遅延時間/応答時間
  • ネットワークトラフィック量
  • Updateおよびサポートライフサイクルへの追従ポリシー
  • SLA/可用性
  • 価格
  • 利用サービス
  • システム利用者の場所
  • 組織外部との連携(利用者/連携サービス)
  • サービス連携手段(プライベートIP/API/Queue、EventHubなど)
  • 開発手法/速度/リリース頻度/スキル/学習コスト
  • 運用手法/コスト/スキル/学習コスト

多数のケーススタディを収集していくなかで、さまざまなスタイル像がおぼろげながら見えてきました。また、スタイルは今後もさらに増えていくでしょう。研究会では、それらの中から明確に定義されたスタイルをガイドラインという形でまとめています。

次回は、このガイドラインのなかから具体的なスタイルの一例をピックアップしてご紹介しましょう。

著者紹介

株式会社ネットワールド
Microsoft ソリューション プリセールスエンジニア
津久井 智浩(つくい ともひろ)

ソリューションディストリビューターであるネットワールドの一員として、お客様に付加価値を提供するというミッションの下、Microsoft製品を中心にオンプレミスからクラウドまで幅広く提案~導入を担当。
趣味はバイク。昼散歩が日課。最近は自分よりもカミさんの働き方改革を何とかしたいと苦悩し、マインクラフトを通して子供と一緒にプログラミングを学びたいと願う40代。3児(2女、1男)の父。