メンズ&レディーススーツの販売をメインに事業展開するAOKIが、男性用ビジネスウェアをサブスクリプションモデルで提供するサービスを2018年4月末より開始した。その名も「suitsbox」。

ユーザー登録の際にサイズやスタイリングなどの希望を選択すると、スタイリストによってコーディネートされたスーツ・シャツ・ネクタイのフルセットが毎月届くというものだ。

レンタルできるセット数に応じて、economy(7800円/月~)、light(1万5,800円/月~)、standard+(2万4,800円/月~)のコースがそれぞれ用意されている。

2017年10月にテストマーケティングを目的として挑戦したクラウンドファンティングでは、目標金額をはるかに超える約223万円を達成し、注目を集めた。

このsuitsboxは、寺田倉庫が提供するクラウド収納サービス「MINIKURA」のAPIをベースとしたイントレプレナー(社内起業家)向けのコンサルティング事業によって誕生したサービスだ。

本稿では、suitsboxの事業責任者 永沼大輔氏とMINIKURA側の担当者である寺田倉庫の姫野良太氏に、suitsboxが世に送り出されるまでの経緯を伺った。

AOKI suitsbox 事業責任者の永沼 大輔氏(左)と寺田倉庫 MNIKURAグループ MINIKURAチームの姫野 良太氏(右)。シャツやネクタイ、ポケットチーフも含め、2人ともsuitsboxのビジネスウェアを着用している

MINIKURAのAPIをスタートアップから大手企業へ展開

寺田倉庫は2013年よりAPIを通してminikura.comで培った物流システムおよび機能を、これまでに20社・30サービスに提供してきた。

もともとBtoCのサービスから始まったMINIKURAを、BtoBでも利用できるようにした形だ。女性向け月額制ファッションレンタルサービスとして人気の「airCloset」がその代表例だろう。

今回はこれらの経験とノウハウを生かし、AOKIの新規事業suitsboxに対してオペレーションからシステムまでの新規事業コンサルを行った。

「イントレプレナーが注目されつつあるなか、MINIKURAのAPIを利用した新規事業を立ち上げたいという要望を大手企業から多くいただいていました。

スタートアップへの支援やパートナーシップの構築はこれまでに多数行ってきましたが、大手企業の新規事業という形ではsuitsboxが初めての事例ですね。

AOKIは全国の店舗網と圧倒的なユーザー数をお持ちであることはもちろんですが、これほどの企業でもレンタルビジネスに対する課題を感じられているということに気づかせていただいたという点も非常に有意義でした」(姫野氏)

社内の新規事業プレゼン大会から生まれた「サブスクリプション」のアイディア

一方でAOKIは、AOKI・ORIHICAの2ブランドで全国に700店舗以上を展開する創業60年の老舗企業だ。

新規事業を考えはじめたのは2017年2月ごろだったという。当時AOKIの経営戦略室に在籍していたという永沼氏は、こう振り返る。

「ちょうど社長が代わったタイミングでしたので、何か新しいことに挑戦しようという雰囲気が社内にもあり、各部署横断で新規事業のプレゼン大会が行われました。ここで『サブスクリプション』というアイディアが出てきたのが、suitsbox誕生のきっかけでした」

とはいえAOKIはシェアリングやサブスクリプションビジネスのノウハウを持ち合わせていなかった。永沼氏がこれらのビジネスについて調べていくうち、airClosetに関する記事に行き着いたのが寺田倉庫との出会いだった。

永沼氏は「AOKIは、倉庫と店舗間、または店舗とメーカー間での商品の移動や仕分けなどは得意ですが、商品を倉庫から個人に送り、それがまた倉庫に戻ってくるという移動のノウハウは今までありませんでした。

寺田倉庫にご相談させていただいた当初は、倉庫自体を借りて、なおかつMINIKURAのプラットフォームを利用することで、サブスクリプションモデルを実現することを想定していました」と説明する。

これに対しMINIKURAは、現状のAOKIの物流センターを活用する方法を提案。スーツからハンカチーフまでをユニーク管理するシステムを提供し、運用設計を行うという形でsuitsboxに協力した。