日本マイクロソフトは5月22日、開発者向けの年次イベント「de:code 2018」を東京都港区のプリンスパークタワー東京にて開催した。
本稿では、東京大学大学院 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 山﨑俊彦准教授によるセッション「人工知能を用いた魅力工学の研究とMicrosoft Azureの教育・研究現場での活用事例紹介」の様子をお届けする。
山﨑准教授の専門は、画像や映像の認識・理解をもとにした「魅力工学」だ。「魅力」を別の言葉で言い換えると、「刺さる」「映える」などとも表現できるだろう。
プレゼンテーションやテレビ番組がどれだけ聴衆や視聴者に”刺さる”か、”インスタ映え”をしたりSNSで人気者になったりする秘訣は何か。山﨑准教授は、研究室で開発しているビッグデータや人工知能の技術を活用して、こうした「魅力」に関するさまざまな現象を数値化し、さらには要因解析から増強までを行うことを目指している。
学部3年生が人工知能のトップカンファレンスに投稿
山﨑准教授はまずセッション前半で、教育現場におけるMicrosoft Azureの活用事例を紹介した。
設備投資を行うことが難しい環境にある大学では、「ディープラーニングを教えようと思っても予算が無い」(山﨑准教授)ような状況だという。
一方でMicrosoftは、学生を対象にAzureの無料アカウントを提供している。無料アカウントでは$100のクレジットを取得でき、12カ月間無料でAzureサービスを利用することができる。そこで山﨑准教授は昨年度、学生からの要望に応える形で、Azureを活用した大学3年生向けの人工知能の授業を立ち上げた。
授業は、前半でPythonによるプログラミングの学習を行い、後半でチームごとに分かれて自由課題演習を行うというもの。Asureのディープラーニング仮想マシン(DLVM)を用いて進められた。
山﨑准教授はDLVMについて、「Microsoftが提供するフレームワーク以外にも、TensorFlow、Keras、Caffe2など、有名なディープラーニングのフレームワークがすべて入っている。AnacondaをはじめPythonの環境も構築されているので、起動した瞬間すぐにディープラーニングが始められる」と評価する。
授業の最後に行われた成果発表会では、Webの内容からQ&Aを自動的に精度よく作成するという「質問応答タスクにおける文法情報と意味情報の埋め込み強化」を行ったチームが、受講者の投票により1位を獲得した。この成果は自然言語処理のトップカンファレンスに投稿中だという。
2位、3位には、DCGANを用いてタレントの画像をもとに新たな「美女」の画像生成を行ったチーム、ディープラーニングでバイナリーオプションの予測を行ったチームが続いた。「DLVMを活用すれば、このように学部3年生でも多様な人工知能、ディープニューラルネットワーク開発が可能」であると説明する山﨑准教授。今年度以降は、授業のさらなる拡充を検討しているという。