今や当たり前となった企業のSNS活用。ユーザーとのコミュニケーションやプロモーションにも利用できる魅力的なツールだが、一方で常に「炎上」のリスクも抱える”諸刃の剣”でもある。

炎上を回避し、企業がSNSを有効活用するためにはどのような姿勢や対策が必要なのだろうか。5月15日~18日にわたって都内で開催された「HRカンファレンス2018 -春-」では、SNSエキスパート協会代表理事の後藤真理恵氏が登壇。「炎上から会社を守る!SNS(ソーシャルメディア)リスクマネジメントの重要性と活用手法」と題し、企業におけるSNS活用の有用性と共にその裏側に潜むリスク、そして対策について解説した。

SNSの基本構造

後藤氏は日本オラクルを経て、ソーシャルメディアマーケティング事業やインフルエンサーマーケティング事業などを展開するコムニコに入社。企業のSNSマーケティング支援を行いながら、現在はSNSエキスパート協会代表理事として人材育成にも務めている人物だ。

SNSエキスパート協会代表理事 後藤真理恵氏

同協会はSNSに関する正しい知識の普及や、SNSマーケティングを安全かつ効果的に実施できる人材の育成を行う組織として2016年11月に発足。企業・団体向けのSNSマーケティング知識・方法を習得するための「初級/上級SNSエキスパート検定」などを実施している。

今回は主に企業の人事担当者に向けて、「SNSとは何か」といった基本的な解説から、SNSマーケティングの有効性、さらに炎上リスクへの対策といった内容までが語られた。

後藤氏はまず、SNSについて「不特定多数の人や企業と自由につながることができ、情報を受け取るだけでなく発信できるサービス」と定義。「『ソーシャルメディア』という言葉もありますが、ソーシャルメディアはブログや動画共有サイトなども含む大きな概念のことで、SNSもソーシャルメディアの1つです」と説明した。

SNSの基本的な構造として重要なのは「フォロワー」や「友だち」といった他者との関わりである。自分が投稿した内容に対してそうしたつながりのある他者からコメントや「いいね」などのリアクションがあり、自分もまた相手の投稿に対してコメントや「いいね」をする。そういった”発信”と”反応”がSNSの構造の肝であり、1対多のコミュニケーションが生まれやすい仕組みになっている。

後藤氏はSNSの大きな特徴として、「フォロワーや友だちとのやり取りを第三者も見ることができる」点だと説明する。友だちとの会話だと思っていたら、無言の他者にやり取りが見られていた――こうしたことが、炎上の大きな要因となり得るのだ。

もちろん、SNS事業者も対策はとっている。一例としては、投稿の公開範囲を細かく指定できるFacebookや、そもそも特定の人以外に投稿を見せないようにできるTwitter、Instagramなどが挙げられるだろう。

「誰であろうと炎上リスクはあるが、それでもSNSユーザーは順調に増加している」と後藤氏は説明する。世界ではFacebook離れが進んでいるという声も聞くが、「それでも今現在、SNS界の王者はFacebookでしょう」というのが後藤氏の見解だ。

また、特徴的な傾向があるのはTwitterで、国内ではFacebook以上のユーザー数を誇る圧倒的人気サービスだが、米国では人気に陰りが見えている。その特殊性は、Twitterの責任者も「日本では独自のTwitter文化が繁栄している」と驚くほどだという。

さらに、昨年あたりから日本で急速に人気を増してきているのがInstagramだ。流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれるなど注目を集めており、ユーザー数は2,000万人を突破している。

SNSユーザー数の伸び

「これがどれほどの規模かというと、かつて最大の人気を誇ったSNS『mixi』ですら、ピーク時の利用者は1,000~1,500万人でした」(後藤氏)

主要SNSの特徴

こうしたSNSはそれぞれに特徴があると後藤氏は言う。

例えばFacebookは基本的に実名登録なこともあり、比較的フォーマルだ。匿名性が薄く、ユーザーのプロフィールも充実していることから、広告出稿におけるターゲティング精度も高いという。

一方、Twitterはリアルタイム性が高く、どちらかと言えば匿名性の強い文化を持つ。日本では140文字の投稿制限があるが、短時間で広範囲に拡散される可能性が最も高いのが特徴だ。企業の投稿が一気に広まるメリットもあるが、その反面、悪い情報なども拡散されるリスクがある。

こうした特性から、「Twitterは炎上しやすいSNS」だと後藤氏は注意を促す。

また、Instagramは、写真もしくは動画をメインに、必要に応じてコメントやハッシュタグを添えて投稿する。ビジュアルを共有することに主軸を置いているので、「ユーザーは世界観を大事にする」(後藤氏)のだという。

近年では「ストーリーズ」と呼ばれる24時間限定で消えるユニークなシステムが人気となっており、アクティブユーザーが多いのも特徴だ。ハッシュタグ文化も盛んで、興味のあるテーマについてはハッシュタグを辿って情報収集するユーザーも多い。こうした現状を反映するかのように、昨年末には「ハッシュタグをフォローする」という新機能も追加されている。